「メキシカン・ロック」で思い出すのは本家の橋幸夫ではなく、水着に浮き輪姿の清水アキラのモノマネ。モノマネも無茶なら、この曲のタイトル「恋のメキシカン・ロック」も無茶ですな。何でもメキシコ五輪の前年に作られた曲らしいのですが、リズムとメロディからはメキシコを何も感じさせないものでした。
さて本題、「メキシカン・グリーン」である。これも無茶したタイトルだと思ったのであるが、自分が無知だっただけのこと。一般的に使われているんですね、色の呼び方としてね。
タビー・ヘイズが何故このタイトルを思い付いたかは不明ですが、この作品をヘイズの代表作にあげる人も多いです。マイク・パイン(p),ロン・マシューソ(b),トニー・レヴィン(d)とのクァルテットでの吹き込みで、ヘイズはテナーとフルートで録音に臨んでおります。
この時期の録音にしては状態が悪くかん高く、ピアノで言えばエレピ風に響き場面もあり残念。この中ではテナーよりもフルートの方が良く響き、「トレントン・プレイス」での霧が立ち込める夕暮れの雑踏の寂しさが、心打つ内容です。
録音状態抜きにテナーを語れば、かつてのゴリゴリ吹く感じから洗練された音に変わっており、また欧州ジャズがフリーに突き進んでいる時代の変化を若干ながら意識させる演奏もあります。しかしながら、必死にハード・バップを探っていたヘイズの姿が根本にあります。
この後いくつかの録音を残し病床につき、1973年に帰らぬ人になったヘイズさん。これが最後の活気ある演奏のようです。
人を陽気にさせると考えていたメキシカン・グリーンという色なのですが、ここでは悩ましい色として演奏されているのが不思議でした。