2003年12月21日掲載
Grachan Moncur Ⅲ       Some Other Stuff
Blue Note原盤            1964年7月録音

 グラシャンorグレシャンorグレイシャン・モンカー三世、読み方はどれが正解なのかな。

 兎も角1960年代を代表するトロンボーン奏者である彼は、ブルー・ノートではハンコックの「マイ・ポイント・オブ・ビュー」が初演奏となっていますね。その後マクリーンの「ワン・ステップ・ビヨンド」でマクリーンを鼓舞した演奏が印象的なモンカーは、そのマクリーンでのセッションとほぼ似た顔ぶれで、モンカー初リーダー作品である「エヴォリューション」を吹き込みました。モーガンにマクリーンにハッチャーソン、そしてボブ・クランショウにトニー・ウィリアムスという豪華メンバーでした。

 今日取り上げる作品はその初リーダー・セッションから半年後のものであり、これまた豪華メンバーとのセッションであります。ショーター,ハンコック,セシル・マクビー、そしてウィリアムスというものです。アルフレッド・ライオンが如何にモンカーに期待していたかが、このメンバーで分かりますね。

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 この作品を吹き込んだ後にモンカーはインパルスに移り、前衛の道を進むことになる。その直前のモンカーがジャズに見出した可能性を、この作品で表したのだ。それは、アドリブを発揮出来る範囲を大きく設けて、各メンバーの創造性の発揮を促すものである。1950年代後半からのオーネット・コールマン等の成果を土台に、更に大きく踏み込んだものだ。その舞台の上でこの作品が、縦横無尽に演奏が音が飛び回った素晴らしい成果を収めたのは、参加メンバーの充実度と柔軟な思考によるものだ。

 この時代と、これから大きな成果を収める音楽家の輝かしい瞬間を納めた秀作だと、この作品は言える。