2003年10月19日掲載
Stewy von Wattenwly  Live at Bird's Eye  Roving
Spirits原盤                  2002年3月録音

 お店の店頭に並ぶ新譜をみながら、新しいアーティスト、新しい盤にいち早く接する楽しみが、欧州新譜購入に熱をあげている時期にはあったね。しかしSJでも大々的に欧州ジャズがもてはやされ、日本のレコード会社も続々発売し始めた時期と同時に、ピアノを中心とする欧州ジャズの中身に表面上の美しさしか感じなくなったんだな。

 まぁ、過去の「今日の1枚」を読み返して頂ければ、その辺の僕の気持ちの推移を読み取って頂けるでしょう。

 さて、本日の主役のステューイ・フォン・ワッテンウィルさんは、僕の欧州ジャズ盤漁り時期には、何故か引っかからなかったお方。スイスのトップ・ピアニストなのだそうで、5枚のリーダー作品を残しております。その中の4枚は、昨今の欧州ブームにのって、日本でも発売されているらしい。

 今回は、レギュラー・トリオにエリック・アレキサンダーを入れての、クァルテット編成。スイスのジャズ・クラブでのライブ録音であります。

20031019

 8月下旬の帰国前に半年分のSJを読み返して、渋谷ジャロさんに注文する作品を選んだのだが、その際に迷うのは国内盤にしようか輸入盤にしようかってこと。輸入盤だと入荷時期の関係で、帰国時に手に入らない可能性が高い。で、このワッテンウィルさんのディスク・レビューをSJで読んで注文しようとした時に、記載されているのは国内盤の規格番号だけなので、致し方なく国内盤を頼んだのだ。しかし今こうしてクレジットを眺めていると、これはローヴィング・スピリッツという日本の会社が製作した盤のようなのだ。プロデューサーも、日本人だしね。

 そして今こうして聴いていると、ローヴィング・スピリッツはアレキサンダーの作品を吹き込みたかっらのであろう。マイルストーン専属であるアレキサンダーは、他レーベルにリーダー作を残せないからね。

 アレキサンダーを語るときに付き纏うのは、コルトレーンの陰というフレーズなのであるが、影響を受けているのは当然だとしても、少なくても現代のジャズ・シーンの中で、彼ほどの表現力と勢いを持ち合わせたテナー奏者は数少ないのである。

 僕がアレキサンダーを聴いいてきた過程は、クリスクロスへの参加作品やマイルストーンへのリーダー作品を、この「今日の1枚」コーナーで取り上げていく中で書いてきた。ここで取り上げたアレキサンダーの作品の中では最新録音になるのがこの盤であるが、自信に漲る彼の演奏を堪能できる内容になっている。

 また形式上の主役かもしれないがワッテンウィルのピアノは、絶妙の陰を強いタッチで演奏しており、アレキサンダーとしっかりと組み合っている演奏だ。トリオだとワッテンウィルのピアノ演奏がどう変わるか分からないが、こと強力テナーとの組み合わせだと、魅力あるピアノ演奏である。

 さて、アレキサンダーに話を戻そう。もう若手ではないであろう。そろそろこれぞ代表作という作品を、立て続けに吹き込める旬の時期をアレキサンダーは迎える予感がしている。そのためには、レギュラーとして活動する強力なクァルテットを編成して欲しいのだ。この作品がその序曲となるのか、違う展開を迎えるのか、これからの数年はアレキサンダーから目が離せない。