最近活動が停滞していた感のあるリアワードの復刻シリーズからの、発売作品です。リアワード復刻品はこのコーナーで何枚も取上げましたが、1960年代のイタリアのみならず欧州ジャズが、アメリカの模倣からフリーを吸収し独自の世界を描いていく様子を我々に存分に教えてくれました。
今回の作品は、Amedeo Tommasi(p), Cicci Santucci(tp), Enzo Scoppa(ts), Giovanni Tommaso(b), Franco Mondini(d) からなるクインテット編成の作品です。「ヨーロッパのジャズ・ディスク」に名前が掲載されているのは、スコッパにトマソだけですね。
1960年録音ですので、ハード・バップを必死に吸収している作品と思うのですがね。
クインテットで演奏した「ballad for micheline」やピアノ・トリオで演奏したタイトル曲では、ハード・バップを洗練させた好演奏。
フリーというかコルトレーン等の時代の動きを感じたかのような「mulatto」や「coltrane」は、少し消化不良だね。この二つの中間と言えるブルース「ballad in forma di blues」が、この作品の中で最も光っている演奏です。
さて、この時代にイタリアのミュージュシャンのどうしてコルトレーンの、特に「マイ・フェイバリット・シングス」の影響が見られたのでしょうかね。アトランティックのスタジオ盤が発売されたのは、1961年ですからね。
1960年の春にコルトレーンはマイルスのバンドで欧州ツァーを行い絶賛され、その様子はドラゴンから2枚組LPとして1980年代前半に発売されています。しかし、この作品への影響を感じさせる演奏ではないです。
そんなことを考えながらコルトレーンの演奏記録を眺めていたら、1960年9月24日にマッコイ入りクインテットでモントレー・ジャズ祭への出演を発見。スタジオ録音一ヶ月前の「マイ・フェイバリット・シングス」が演奏されています。
この音源は発表されていませんので内容には触れられませんが、トマシはこのジャズ祭でのコルトレーンの演奏に何らかの形で触れ、それに触発されたことが、この作品に影響しているのではと、勝手に想像致しました。