澤野商会の最大の功績は、ウラジミール・シャフラノフを表舞台に引出し、本日取り上げるミラバッシを世に送り込んだことであることに、誰も異論があるまい。
ミラバッシの初作は1999年12月29日にここで取り上げ大絶賛しましたが、2作目の登場までは随分待たされましたね。で、今回はソロ。前作でのベースとドラムとの一体による緊張感・スリル・甘さが、ピアノ・ソロではどのように聴けるかがポイントの作品でしょう。
なお、このCDには30ページ以上のブックレットが封入されており、選んだ曲の背景となっている事が、戦争や紛争などの写真によって表されています。僕はこのブックレットを無視して聴きます。
全曲が美しいメロディ。ミラバッシのピアノも、極限までその美しさを昇華させている。だが、そこには恐ろしいまでの緊張感が支配している。音楽の内容は違うが、この緊張感だけに関しては、「神懸り」コルトレーンのようだ。これだけの緊張感を維持させた演奏を続けていたらミラバッシ、早死にするでしょう。素晴らしいミュージュシャンには長生きして欲しいのだが、下らない演奏をしてまで長生きはして欲しくない。聴く方は残酷なのだ。我々は後何作ミラバッシの作品に接することが出来るか分からないが、「極限」の美を常に提供してくれることを、切に希望する。