実はこの作品を、先の欧州盤特集で取り上げてしまいそうだったんです。だってジャケは紅葉、アメリカ人に紅葉を良とする感覚があるなんて思えなかったからね。アメリカのレーベルからの発売なのですが、ディスクユニオン新宿店のピアノ新作コーナーに、長い間売れ続けている作品って謳い文句が書かれて平積みしてあったのを、ゲット。でも今、「ピアノ・トリオ1600」を読んでみたら、「天性のショウマン・タイプで、器用にいろんなスタイルをこなす。ピート・ジョリーに似ている」とあった。内ジャケをみると、60半ばのおじさん。買うんじゃなかったというのが、今の本音です。
ハーブ・ドルリは、そんなにレコーディングの機会には恵まれてなく、ましてやピアノ・トリオとなると数枚でしかない方。このレコーディングに際して、様々なアイデアを集めて、強い気持で録音に望んだのでしょう。メロディのとらえ方とちょっとしたヒネリ方が、良いですよ。エヴァンスの「very early」、カルロス・ジョビンの「mojave」、ブラウニーの「daahoud」なんて選曲のセンスもいいな。強烈なアドリブは望めないのですが、そのメロディの心地よさに浸れる1枚。ベテランの執念の1枚ですな。