レコード、特にジャズのレコードはジャケットが魅力の一つですよね。CDになってからは、その大きさから魅力が落ちてきましたが、そんでも大いなる興味の一つです。ジャケットで判断して、未知の方の作品を買ったりしますからね。この作品のジャケは秀逸です。 表情のとらえ方は勿論の事、陰の付け方とバックの処理が最高の写真です。またタイトルの入れ方も、すんなりと決まってますよね。このサイトに写真のコーナーがありモデル写真を掲載しているのですが、こういう撮影の仕方は非常に勉強になります。さてここで写ってい るお方は、オリン・エヴァンスというピアニストです。名前は何度か雑誌で目にしたことがありますが、彼のリーダー作は初めて買いましたし、サイドで入っている作品も思い浮かば ないですので、ここで初めて聴くようなものです。Rodney Whitaker(b)、Ralph Peterson(d) という手堅いメンバーを得てのピアノ・トリオを中心に、9曲中3曲にホーンが入っています。
のっけがエヴァンスのピアノ・ソロ演奏です。ユニークな左手の動きと、不協和音の入れ方が印象的な演奏になっています。ピカイチの出来が、“the elm”です。ベースとのデュオ演奏で、強力なベースラインとのゆったりとした展開です。このテンポの中でエヴァンスのピアノは、重量感溢れるものですよ。またラルフ・ピーターソンのドラムも絶好調です。“bernie's tune”では、切れ味鋭いブラシを聴かせてくれます。ホーン入りの3曲も、仕掛けタップリの演奏になっています。この作品 自体、若きエヴァンスの実力が存分に発揮されいる好盤です。今後彼が様々なセッションに参加することで自身の方向性とセンスを磨いて行くことで、更なるレコーディングをしていくでしょう。少し心配なのが、この独特のピアノ・スタイルのために、他人のセッションにはなかなか声が掛からないのではという点。彼がサイドとしてどんな演奏をするのかに、興味があるのですけどね。モンクのピアノ・スタイルを上手く表現出来ないのと同様に、エヴァンスのスタイルも表現が難しいのですが、この作品を通じて彼の演奏に接しても決して損をさせない、作品ですよ。