ここでウォーン・マーシュ(ts)のリーダー作を取り上げるのは初めて。簡単に経歴を。
1927年にLAに生まれた彼は、幼い頃からアコーディオンやバク・クラ、アルト・テナーサックスを次々とマスターし、1944年にプロ入りしました。その後陸軍にとられるものの、除隊するとバディ・リッチとツァーを行ない、NYに落ち着いた後はレニー・トリスターノのバンドに加わりました。その後トリスターノから最も信頼されるミュージュシャンになり、1965年までトリスターノのバンドを中心に活躍していたのですが、その後はLAに戻り水泳と音楽の教師をしながら、時折演奏するという生活を送っていました。その後1972年にスーパーサックスの主要メンバーになり、自己のグループを結成しながら活躍していたのですが、1987年にLAのジャズ・クラブに出演中に心臓発作で倒れ、帰らぬ人になったのです。ってなことを今「人名辞典」を紐解いて書いたのですが、トリスターノ関わりで僕はマーシュを敬遠していたのでしょうね。
死の前年に吹き込まれたこの作品は、当時人気が高かったことを記憶しています。今年に入ってクリスクロスがCD化し、14年前よりは幅広くジャズを聴くようになった僕が、入手した次第です。Barry Harris(p)とAlbert Heath(d)が入ったクァルテットで、数曲だけJimmy Halperin(ts)が加わり2テナーになっています。
小難しいトリスターノって考えていたのは間違いだったと以前書いたのですが、トリスターノ作のタイトル曲「バック・ホーム」での楽しさは、そよ風のようですね。曲調も、そしてミドルテンポでの演奏もです。この曲ではもう一人のテナーも加わっているのですが、マーシュの2テナーと言えば誰でも1950年代のテッド・ブラウンとのそれを思い出すでしょう。それから30年後にマーシュは、この若きテナー・マンにかつてのブラウンをダブらせ、これからの共演に様々なアイデアを用意していたのでしょう。とにかく、この曲での二人のテナーの掛け合いは、愉快な気分にさせてくれる出来です。バラードのマーシュもあるのですが、愉快なマーシュに気持が入り込みました。
CD化にあたり4曲追加になったのですが、レコードには収録されていない「ジョイ・スプリング」の愉しさも痛快ですよ。その意味では、レコードで本作品を愛聴されていられる方には、是非CDも聴いて欲しいですね。これからのマーシュの更なる展開が期待出来る盤なだけに、翌年の死が実に残念です。