1999年9月5日掲載
David Murray       Morning Song
Black Saint原盤     1983年9月録音

 僕はこの作品が発表された辺りからマレイを聞き始めました。これはピアノが入ったオー ソドックスなクァルテットでの録音で、マレイのリーダー作品では初めてのことです。またメンバーについては、これまでは、自分と同じような世代でロフトで活躍してきていた人が中心だったのですが、ここではベテランを揃えています。ピアノにジョン・ヒックス、ベー スにレジー・ワークマン、ドラムにエド・ブラックェルというメンバーです。初めて演奏する曲を揃えていまして、新たな発展をマレイは考えているのでしょうね。

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 リズム・セクションは基本的に4ビートを刻んでいて、スタンダードの“body and soul”“jitterbag waltz”などではその心地よさを満喫出来、今までのマレイの作品では味わえない仕上がりになっています。また雄大で力強いマレイのオリジナル “morning song”では、4ビートがピッタリくる曲です。この雰囲気の中でマレイのテナーは伝統に根ざした演奏が感じられるものの、その奥にはロフトで大暴れし、ヨーロッパで初期のしっかりとしたスタイルを築き、またソロ・パフォーマンスでギリギリまでサックスでの表現方法を突き詰めていったマレイの姿を確認出来ます。“duet”はサックスとドラムのデュオ演奏なのですが、エド・ブラックェルの激しいドラムに乗って演奏するマレイには、風格が増してきていますね。前作とは内容は違うものの、前年まで3年間続いたオクテットでの活動から、更に幅を広げていくマレイの姿を、素晴らしい演奏と共に実感出来ます。