DIWへのマレイの 独名義のリーダー録音としては初のもので、プロデューサーは、杉山和紀氏です。ギターにジェームス・ブラッド・ウルマー、ベースにお馴染みフレッドホプキンス、ドラムには1975年にロフトに進出したマレイを可愛がってくれた大御所サニー・マレイが参加しています。ウルマーがマレイのリー ダー作に初めて参加したのは2年前の“children”でしたが、そこでは1曲だけの演奏で、何か中途半端な感じを抱かせるものでした。モリスの2曲とマレイの3曲が収められているこの作品で、ウル マーは全曲参加しておりまして、その存在が鍵になるセッションです。
いやー、ウルマーがバッキングに徹していますよ。“long goodbye”はモリスがドン・ピューレンのオーケストラのために書いた組曲の一部で、素敵なバラッドです。また“patricia”は4度目の登場となるマレイの曲で、これまた美しいスロー・ナンバーです。ここでマレイは魂のこもった演奏を繰り広げていますが、そのバックでウルマーのギターが全面に出ることなく、しかしながらウルマーの持ち味をはっきり確認出来る演奏を行ってます。マレイのテナーの色合いも、このギターをバックにすることで、いつもとは違ったものを認識できますね。“light years”は唯一フリーキーな曲でして、ここではウルマーを筆頭に各メンバーのソロが存分に楽しめます。これまではミュージュシャン・プロデュース的な作品がほとんどだったマレイですが、DIWでの吹込みでプロデューサーがある程度の方向性を示していくようになってますね。ただしこの場合、オーバー・プロデュースに陥ることが心配なのですが、この作品は問題ないですよ。