マリリン・ムーアという女性ヴォーカリストの作品を紹介します。1931年生まれ、両親はヴォードビリアン、そしてアル・コーンとの結婚歴あり、というのが知っている限りの彼女の経歴です。この作品のバックは旦那のアル・コーン(ts)、ジョー・ワイルダー(tp)などが参加しているドン・エブニー(p)のコンボをバックにしています。一般的にはビリー・ホリディのそっくりさんと言われる彼女の歌唱スタイルが、“I got rythm”等のスタンダードをどんな風に聴かせてくれるのでしょうか。
確かにホリディに似た歌い方ですね、彼女は。ただ歌の奥に見えるムーアの顔は微笑んでいるが、ホリディの場合は悲しげに微笑んでいる感じがします。失恋の詩の場合、ムーアはそれを過去のものとしてとらえ、ホリディの場合は今の悲しみと受け止めている感じです。“is you is or is you ain't may baby” という文法が間違っているのかと思うような曲名の歌では、ムーアの表現力の高さに酔ってしまいます。