1978年のマレイのレコーディング活動は、フランスでのライブ録音から始まりました。ペットに は前年のオランダでのライブ録音で初競演となったモリスが、再び参加しています。編成はピア ノレス・クァルテットで、ベースにジョニー・ダイアニとドラムにジョージ・ブラウンという初めて競演するメンバーです。この二人はヨーロッパの方だと思います。A面には初披露の“the fast life”“Monikole”、B面にファースト・アルバムのセッションで録音されながらお蔵入りになっていた“the hill”と、前月の大晦日セッションで初披露されたタイトル曲が演奏されています。どれもマレイにとって重要なレパートリーになっていく曲です。
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前年8月のアムステルダムでのライブ録音ではバンドとしてのまとまりが少し希薄に感じられましたが、ここでは素晴らしい一体感 が聴き取れます。ヨーロッパのフリー・ジャズ・ファンの期待に合わせたかのような前年のライブ、ロフト・シーンに根ざした他の作品に比べて、ここではブルースを基本としたマレイの個性が、はっきりと示されています。マレイのテナーの音色も前年の活躍で自身を深めたのか雄大な響きになり、自分の演奏がオフの場面でもバンド全体をリードしていってます。前年のボウイと一緒のセッションで少しだけ披露されたタイトル曲が、ここでは生まれ変わったかのように聴かれますね。またデビュー・アルバムのセッションで録音はされた“the hill”も、アルコ・ベー スを基調にした重厚な作品に仕上げています。自身に満ち溢れたマレイの演奏を存分に楽しめる作品ですよ。