1999年7月1日掲載
Annie Ross       sings a song with mulligan
Pacific Jazz原盤  1957年12月録音

 1930年にイギリスで生まれたアニー・ロスは3歳からLAで育ち、子役スターとして活躍していました。17歳の時にイギリスに戻り女優とキャバレー・シンガーとして活動した後二十歳の時にNYに活動の場所を移しました。歌手として活動していくうちに、パシフィック・ジャズのオーナーのディック・ボックの目にとまり、この作品が吹き込まれました。彼女と、バリトン・サックスのジェリー・マリガンのコ・リーダー作 品のようでもありますね。ペットにアート・ファーマーかチェット・ベイカーが曲によって交代で参加しており、ピアノレス・カルテットのバックになっています。ピアノが入っていないボーカル作品ということでも興味が沸きますね。彼女の最高傑作と言われる本作品、 曲はスタンダードがぎっしり並べられていますよ。

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 ジャケットをちょっと見ただけだと美人なんだろうけど、さして魅力は感じられなかったんですよ。僕は会社の机上のノートPCの壁紙には、前日に紹介した“今日の1枚”のジャケ写にしているんだけど、今日彼女の姿を見ていたら、なんだか段々吸い込まれていきました。スクリーン・セーバーが時折邪魔しやがるので、待ち時間を48分にしてしまうほどでした。彼女の歌声も、最初は冷たく感じたのですが、徐々に繊細で落ち着いていて優しさがあるように聞こえて来ました。こうなると、もう彼女の虜、ましてや“ギブ・ミー・ザ・シンプル・ライフ”や“レット・ゼア・ビー・ラブ”のような、テクニックで聞かすのではなく、優しさが重要になってくる曲では何度も聴き返してしまいますよ。もう一人の主役のマリガンは、実に器用な人ですね。ソロでは彼女の雰囲気を引き継いで演奏して良いのですが、素晴らしいのはロスが歌っている最中です。歌を決して邪魔をせず、決め所を心得たバリトン・サックスを吹いています。

 本題に関係ないのですが、センスが悪いのは、東芝EMIが付けた邦題、“アニー・ロスは歌う”だって。ジャズはセンスが全てなんだよな。

 そー言えば昔、ポール・マッカートニーの名盤“バンド・オン・ザ・ラン”を東芝EMIは和訳さずに発売したのですが、最後まで候補に上っていたタイトルが笑っちゃいますよ。“バンドは荒野を駆け抜ける”だって。話しが外れてしまいましたね。