インディアナビゲイションというレーベルは1970年代のロフト・シーンを支えてレーベルの一つで、僕の愛するテナーマンのデビッド・マレイもここからデビュー アルバムを出しました。1960年代から活躍しているベーシストのセシル・マクビーが、テナーのチコ・フリー・マン、ピアノのドン・ピューレン、ここではパーカッションで参加しているドン・モイエ等と吹き込んだのが本アルバムです。1970年代のロフト・シーンの香が、今の時代にどう聞こえるかが楽しみですね。
ベーシストのリーダーアルバムの場合、ベースソロを楽しみにするのではなく、バッキングに徹するベースを期待する人は多いのではないかと思います。リーダーがベーシストでないアルバムでも、長いベースソロに閉口してしまうことがあります。そんな中で僕にとって長いベースソロが心地よく感じたのは、インパルス後期のコルトレーン・グループにおけるジミー・ギャリソンの演奏でした。“マイ・フェイバリット・シングス”では晩年には10分超えるベースソロが珍しくなかったのですが、次の展開を期待させる演奏が続き、聞く者をワクワクさせる素晴らしい演奏を繰り広げてます。
で、このセシル・マクビーのアルバム、 全体を彼のメロディカルで暖かく動き回るベースが包み込んでいますよ。ソロは長くても2分程です。他のメンバーが印象深い演奏を行なっても、マクビーのベースのバッキ ングで華麗に踊っている感じです。テクニック的なことは分からないのですが、タイトル曲の冒頭のベースソロは多重録音のようです。左右のスピーカーから交互に、メロディが聞こえてきますからね。でもこれが多重録音で無いとしたら、驚異的な演奏技術ですぞ。
ベース1本で異次元空間に連れていかれるアルバムです。ピアノがもう少しフューチャーされていればもっと僕好みになるのだが・・・、なんて言うのは贅沢ですね。