テナー奏者のテッド・ブラウンはトリスターノ門下生で、1956年7月から半年間、トリスターノ門下の高弟で名高い同じテナーのウォーン・マーシュとコンボを組んでおり、このアルバムはそのコンボで吹き込まれたものです。ピアノにこれまたトリスターノ門下生のロニー・ボールが加わっていますが、ゲストとしてアルトのアート・ペッパーが参加しています。ペッパーのトリスターノ派との競演が凶と出るか吉とでるのでしょうか。
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取り上げている曲が、スィングありバラッドありロリンズの名演でお馴染みの曲あり、そしていかにもトリスターノ派という曲ありで、楽しいアルバム構成になっています。これらの曲でメンバーは心地よい演奏を繰り広げていて、クール派の音楽を余り聞いていない者には、新鮮は響きで聞こえます。“理知的で難解な”という形容詞に敬遠されている部分がクール派にあるのですが、このアルバムのように構成と編成に少し遊び心を加えると、聞きやすくなるのですね。で、ペッパーはこのコンボの雰囲気を理解して、でしゃばらずに協調的に、このアルバムに貢献しています。