フランス人のテナー奏者のバルネ・ウイランは、1950年代から来仏したアメリカのミュージュシャンと度々競演していました。その代表としては、マイルス・デイビス が担当した映画“死刑台のエレベータ”のサウンド・トラックへの参加ですね。この時期が彼の第一の絶頂期で、このアルバムはそんな時期に来仏していたトランペット のケニー・ドーハム、ピアノのデューク・ジョーダンと吹き込んだものです。ドラムにはヨーロッパジャズの巨匠、ダニエル・ユメールが参加してましすよ。
ドーハムは何かの楽旅でフランスに来ていたのかな。デューク・ジョーダンはこの年からフランスに滞在し始めます。アメリカでの活動に一区切りつけたのか、愛想を尽かしたのか分からないけど。ウイアランとユメールは二十歳そこそこで、ジャズの本国アメリカから来るミュージュシャンとの演奏する機会を、緊張を持って待っていたのかな。そんな彼らがジャズ・メッセンジャースのライブ録音で有名なサンジェルマンで、二日間のライブを行なった記録がこのアルバム。その後の彼らの音楽活動からみれば、ほんの二日間のセッションなのでしょうが、世の中からジャズが追放されない限り、永久に語り続けられる名演になりました。12分にも及ぶ“ベッサメ・ムーチョ”は、それぞれのジャズに対 する思いがぶつかり合う演奏です。展開とコード進行を軽く打合せただけの演奏かもしれないが、それぞれのソロにはタマラン出来。このような二晩の出会いが名盤を生み出せるのがジャズの魅力の一つでしょうね。