ミンガスの“直立猿人”への参加でその名を知られるテナー奏者J.R.モンテローズの、数少ないリーダーアルバムの中で、幻の名盤と言われているものです。力強さとエモーショナルな演奏をする彼ですが、楽旅の途中で気に入った土地があるとそこに長く留まってしまうため、録音が少ないようです。このアルバムも、楽旅の途中でアイオワ 州のセダー・ラピッズが気に入り、テンダー・トラップ・クラブで演奏しながら1年間滞在していた時に録音されたものです。バックも同クラブのハウスピアノトリオです。 彼の名盤“the message”の4年後のこの録音、バックとの絡みも興味ありますね。
骨太のテナーの音が魅力的ですね。ロリンズに似ている音色ですが、塩辛い感じで独特の音です。この音だけでも彼の虜になりそうですが、最大の魅力は聞くものの心を掴む演奏ですね。くどくどしていなく、またさらっとしている訳でもなく、素直に彼の世界の中に入っていけます。しかしいったん入ると、エモーショナルで躍動感溢れていて語り掛けるような演奏につかまってしまいます。“アイ・シュッド・ケア”や“ラバー・マン”のようなスタンダード曲では、素直にそして聞かせ所を心得た演奏のテーマの後に、彼の心情を込めたソロを聞かせてくれます。オリジナルの4曲では、“ワルツ・フォー・クレア”のおおらかな気持ちにさ せる親しみ溢れた曲で、彼の魅力が存分に発揮されていますよ。バックの中ではベースのゲリー・アレンが力強く、しかしでしゃばる訳ではない演奏が全体を引き締めていま す。アメリカにはこのアレンのように無名で終ったミュージュシャンの中にも素晴らしい人が多かったのでしょうね。このアルバムは権利の関係でなかなか再発されませんが、多くの人に聞いて欲しいだけに、常に手に入る状態になると良いのですけどね。