ドラム奏者のミルフォード・グレイヴスとマレイの、デュオ作品です。ドラムとのデュオと言えば、1986年にジャック・ディジョネットとの作品がありました。 それは一部にベースのフレッド・ホプキンスが参加していましたから、純粋なデュオではありませんでしたがね。今回のお相手のミルフォード・グレイヴスは、実に寡作な方です。1960年代からESPレーベルなどに作品を発表してきたのですが、この作品吹込みまでに参加作品は26枚、リーダー作品となれば10枚にも満たないのです。 グレイヴスは南アフリカ出身なのですが、打楽器の演奏は、病気を治すまじない師の役割があるらしく、そのことが寡作ぶりに関係があるのでしょうか。マレイとの共演は実に意外な感じを、発売当時は受けました。それはグレイヴスがロフトーシーンに一切関わらなかったことが、意外な感じに繋がったのでしょうね。グレイヴスと同時期から活躍しているサニー・マレイが積極的にロフト・シーンに関わってたことと、 良い対比になっています。ここでは過去の経緯はあまり考えず、純粋にこのセッショ ンが楽しめるものであるこことが、重要なポイントでしょう。
多重録音を思わせるほど、多彩な打楽器の音が飛び出してきます。この表現力豊かな演奏は、相手を選ぶでしょうね。マレイはグレイヴスの自宅を訪れ、熱のこもった練習を行なっていたそうですが、 二人のインスピレーションのぶつかり合いは、スリリングな出来になっています。きっとグレイヴスがロフト・シーンに参加していたら、はるか以前から二人の名演が残され たことでしょう。DIWというレーベル、そして杉山和紀プロデューサーの、企画能力の高さは本当に評価出きるものです。さて、前述のグレイヴスの自宅での練習の件、ドイ ツのTV局が撮影し、ドキュメンタリーとして放送したそうです。このアルバムを聴くと、その放送を見てみたくなりますよ。