この月の6日間セッションの真中での収録作品です。メンバー前作と同様ですが、マ レイはテナー1本で演奏しています。当然ながら前作同様の好調な演奏が期待できますが、別の注目点は2曲だけブンランフォード・マルサリスが参加していることですね。当時のアメリカや日本のマスコミの間ではマルサリス兄弟の話題一色と言っても言い過ぎではない状況でした。終いには親父さんまで表舞台に引っ張り出されましたからね。スィング・ジャーナルでは新伝承派などと言って、大騒ぎしていましたね。そんな動きの中で、僕はブランフォードだけは何枚か続けてCDを買っていました。そんな意味でこの共演は大歓迎ですね。
ヒックスのピアノが引続き絶好調ですね。マレイとのレコーディングを始めて8年目、ピッタリと息が合ってきましたね。 “intuitively”はバレル作の曲で、この年にマレイとバレルのデュオ作品で発表された曲なのですが、ヒックスはストレートな演奏でマレイとセッションを繰り広げ て、バレルのそれとは違う世界をマレイに提示しています。そんな二人の好演奏に乗ってブランフォード・マルサリスが2曲吹いているのですが、テナー・バトルというキャッチ・フレーズのような演奏ではなく、あくまで客演というものです。こ こでブランフォードが参加した理由は、DIWがアメリカのソニー・ミュージック・ エンターテイメントと契約し、製作してきた作品をアメリカで発売されることになったのです。当時コロンビアに所属していたブランフォードが、同じソニー系ということで、このセッションに呼ばれたのではないのでしょうか。この作品を語る場合、サイドで重要な演奏しているのはヒックスであって、ブランフォードは素敵な演奏をしているものの、あくまで色づけですね。それにしても4日間で吹き込まれたこの2枚は、充実しています。