1999年10月26日掲載
David Murray      Ming's Samba
Portrait原盤     1988年7月録音

 DIWやBlack Saint などジャズを聴いている人にとっては知れたレーベルですが、所詮はマイナー・レーベルです。この作品がマレイにとって、メジャー・レーベルでの初の録音ということになります。ポートレイトというのは、CBSの一つのレーベルなのです。メジャー初挑戦に際して選んだメンバーは、マレイ作品で4度目の共演のジョン・ ヒックス(p)、2度目のレイ・ドラモンド(b)とエド・ブラックウェル(d)でして、手堅いメンバーで固めた感じです。この作品のもう一つの注目点は、ジャズ界の大物プロデュー サーのボブ・シールが、参加していることです。もちろんボブ・シールの目にマレイが とまったからこそ、このレコーディングに繋がったのでしょうね。全5曲ともマレイと モリス作の新曲で望んだこの作品、奥さんのミンのサンバってタイトルだけが、不思議なんですけどね。

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 サンバのリズムの香が漂うタイトル曲の出来が素晴らしいです。メジャー調の楽しげなマレイ自作の曲では、モーニング・ソ ングと並んで、この曲は印象深いものですね。レイの軽めながら流暢なベース、軽快なエドのドラムはともすると他のマレイのセッションでは物足りなく感じるスタイルですが、ここではこの二人の特徴がこの曲に見事にマッチしています。ヒックスの手堅いピ アノも加わったこの曲で披露されるマレイのソロは、彼の数多いレコーディングの中でもトップクラスの輝きを放っています。もう一つ特筆すべき曲は、モリス作のタンゴ調 の“spooning”です。薄暗い空気の中に上品で情緒的なメロディーが、印象深いものになっています。このアルバムは、メンバーの設定から選曲までボブ・シールが入念に計画したものなのでしょうね。ボブのプロデュースはこの作品では見事に成功していますが、後年は辛口の評価を下さなければならない作品を残していますが、ここで触れるのはよしましょう。メジャー初作品は、抜群の出来になっていますよ。