ウエスの作品の中で、私が最も聴いた作品がこれになります。1968年6月に人気絶頂の中で心臓麻痺で亡くなったウエス、その5年後にフランス国営放送のテープから発掘された作品です。
この年のウエスのライブ作品と言えば、6月と9月にNYのハーフ・ノートで行われたものが有名です。今日取上げるのは、パリにあるTheatre Des Champs-Elysees で行われたライブであります。ハロルド・メイバーン(p),アーサー・ハーパー(b),ジミー・ラヴレイズ(d)との演奏であり、ハーフ・ノートでのメンバーとは違っております。全8曲、LP2枚組で発売されました。私が持っているのは、1987年にCD発売されたもので、こちらでも2枚組みでありました。なお、1曲だけ、ジョニー・グリフィンが参加しております。
LPでいうところのB面の1曲目は『Mister Walker』です。グルーヴ感満載で、どこまで熱気が続くのかとおもう演奏。ウエスの長いソロ終了後の拍手を聞けば、会場の熱気が分かるものです。インターネットで調べれば、Theatre Des Champs-Elysees という会場は、格調高いコンサート・ホールです。普段はクラシックが流れている会場です。しかし1965年のこの一瞬は、大きなライブハウス化していたのです。数多あるジャズの名場面の一つであります。続く曲は、ウエスのヒーローであるジャンゴに捧げたバラッド『To Django』です。一転して静の世界を、暖かいギターで表現しております。この動と静の妙には、何度聴いても感心します。これからも愛聴盤であり続ける作品です。