フィルさんはNY生まれのピアニスト。1970年頃からプロ活動を始めたらしい方ですが、彼のリーダー作品は、今日取上げるピアノ・トリオ作品を含めて2枚しかありません。彼の長年の活動の中で注目を浴びるのは、1970年代後半にチェット・ベイカーのグループに参加したことでしょう。チェットに関しては僕は語るだけの知識は無く、ましてや晩年の作品は聴いたことはないので、チェット・グループでのフィルの演奏は知りません。ですから、この2点の情報から勝手にフィルさんを想像すれば、サイド・マンとしては重宝されるが、リーダー作品を吹き込ませようとは思わないピアニストなのでしょう。これが正解だとすれば、この作品はつまらないもの。折角購入した僕としては、日の当たらないピアニストが吹き込んだ、一世一代の入魂盤であることを望みます。
Roy Cumming(b),Glenn Davis(d)が参加しており、スタンダードと自作曲で構成されている作品です。
静寂の中でのゆったりとした時間が、ノンビリと過ぎていく作品です。微かに薄日が差し込む図書館のような雰囲気です。それはそれで良い世界だし、安定してこのような世界を提示し続けられるのはなかなかのもので、マイケル・ブレッカーやデイブ・リーブマンからもお呼びが掛かる実力が理解出来る内容です。
しかし、何かがプラスされて欲しかった。まったりとした図書館の空気が、美少女の入館によって微かに変わっていくような展開が欲しかった。やはり、リーダー作を彼に求めるのは、少し厳しいところなのでしょう。