2006年1月28日掲載
Donna Brooks       I'll take romance
dawn原盤           1956年録音

 1988年に当時日本にあったファンハウスというレコード会社から、ドーン・レーベルの作品が、40枚ほど発売されました。これはこのレーベルの、事実上コンプリート発売だったとのことです。今その発売リストを見ておりますが、持っているのは7枚ほどです。その他の未購入作品は、その当時は興味が無かったものなのですが、今となっては欲しい作品が結構あります。現在に至るまで再発された形跡がないものが多いのですが、シムズの作品などは、是非ともいつかは買いたいもです。

 さて、そんなドーン・レーベルの中に、ドナ・ブルックスという女性歌手の作品があります。殆ど経歴が分からない方なのですが、何でもオペラの練習をしていた方らしいです。その後ジャズに興味を持ち、いくつかの楽団で歌った後に、アコーディオン奏者のマット・マシューズと出会い、その縁からベツレヘムにEP盤用に4曲吹き込みました。それが評判良かったのか、ドーン・レーベルに作品を残すことになったのです。アレックス・スミスのピアノ・トリオをバックにして、11曲歌っております。

20060128

 ハスキーで骨太の歌声。色気は微かなもの。ミドル・テンポの曲を得意としている感じがしましたが、スローな曲も、歌唱力の高さで、見事に歌いきっております。

 例えば、『old folks』です。グリフィンがリトル・ジャイアントで披露したのをすぐ思い出すメロディですが、歌っている方は非常に少ない曲です。そんな曲をドナさんは、しっとりと歌っております。また、ピアノのアレックス・スミスですが、独特のリズムが何ともいえない演奏で、ドナさんとの対比で面白い効果を出しております。

 このアレックスは、全く無名のお方。そして主役のドナさんは、この作品以降の消息が不明なお方。1950年代の後半に無名な二人が残した素敵な一瞬が、ここにあります。

 もしドナさんに男を惑わす色気があったならば、違った展開があったかも知れません。