この時期、アルトのマクリーンはプレスティッジに立て続けにレコーディングを行っていました。このアルバムは、ペットのビル・ハードマンのお披露目アルバムでもあります。ハードマンはこの年にミンガス・グループに短期間在籍した後に、ジャズ・メッセンジャースに加わっています。ベースにチェンバース、ドラムにフィリー、ピアノにマルが参加していて、メンバーのオリジナル曲が中心の構成になっています。
数あるマクリーンのアルバムの中で、これを代表作という人は希でしょうね。僕も決して代表作とは思いませんが、繰り返し聴いてみたくなる愛着のもてるアルバムです。マクリーンのオリジナルの “sweet doll”というマイナー・テーマの曲が良いですね。ここでの彼のアルトは、肩肘を張ったものではなく、気軽に吹いています。そー言った意味では、マルのオリジナルの“dee's dilemma”にも同じ事が言えますよ。さてビル・ハードマンのペットですが、何かギスギスする感じがして、全体的には当たり障りなくレコーディ ングをこなしたというものです。しかしながらビルを大フューチャーしたスタンダー ドの“it could happen to you”での、スロー・ナンバーを気持ちを込めて吹く姿には、彼の良さを覗えるものがありました。この後、プレスティッジにそんな多くの吹き込みを彼は残していないのですが、このアルバムでもっと良さを覗えるものがあれば、違った結果になったかも知れませんね。