テナーとサプラノ・サックスのネイザン・デイビスは1960年代からヨーロッパに活動の拠点を置いていました。このアルバムは久しぶりに発表された彼のリーダー作品で、ペットにダスコ・ゴイコビッチが参加しています。この二人の競演と言えば、ダスコのリーダー作“スウィンギング・マケドニア”が有名です。特に日本ではジャズ喫茶での大人気盤になりました。さてこの“ロンドン・バイ・ナイト”、11年前にDIWから、ダスコの新作と一緒に発売されました。その日僕は渋谷のジャズ屋さんにいたのですが、何人もの人がこの二つの新譜の入荷を、熱い作品に対する期待を語りながら待っていました。その時点では本作品にさほど興味を持っていなかった僕は、その熱さに釣られて買ってしまった作品です。ピアノにケニー・ドリューが参加しています。
取上げている曲が良いですね、特に最初からの4曲が最高の出来です。“ノイテ・エン・レブロン”はデイヴィスのオリジナルで、ブルース・マーチを思い出させる感じの曲です。テナーとペットの力強い演奏が繰り広げられています。2曲目の“アイ・ソート・アバウト・ユー”では、ソプラノ・サックスが夢を見させてくれるような響きで、美しいバラッドを聴かせてます。3曲目の“リオ・デ・ジャネイロ” はデイヴィスのマイナー曲で、このアルバムの白眉です。曲名からするとカーニバルでも思い出させてくれるリズミカルな曲だと思ったら、沈み行く夕陽を涙してみている気になる悲しげな曲で、ソプラノ・サックスとミュート・トランペットが絶妙のバランスです。4曲目の“ロ ンドン・バイ・ナイト”は綺麗なスロー・ナンバーです。裏ジャケットには表記されていないのですが、デイヴィスはここではフルートを披露してくれます。ドルフィーがヨーロッパ公演で聴かせてくれたフルートの響きを、ドルフィーと競演したことのあるデイヴィスが蘇らせてくれているようですね。デイヴィスとバックの面々の充実した演奏と曲の良さがあいまって、 このアルバムは末永くファンに熱く語られる作品であり続けるでしょう。