Bud Powell
Earl Bud Powell Vol.8(Holidays in Edenville,64)

録音日 1964年8月10日(ジャケ記載データ)
I Remember Clifford が収録されている作品をつまみ食い

つまみ食い前

 バド・パウエルの未発表10枚ものが発売され、ジャズ・ファンを驚愕させたのは1989年のことでした。その際に、僕が通っていた渋谷ジャロさんの中での様子を書きながら、10枚連続で「今日の1枚」で取上げたのが2003年6月のこと、今から13年前のことです。そして「I Remember Clifford」が収録されている第8集を取上げたのが6月8日でした。

 「何かを決意したかのような深層心理があるかのような暗部を感じさせる演奏である」とコメントしましたが、分かるようで分からないようなこのコメントの意味を「I Remember Clifford」を中心に聴きながら、思い返してみます。

pcl08

つまみ食い後

 先ずは2003年6月8日に「今日の1枚」で取上げた際のコメントの訂正を。「1964年8月に Edenville という場所で吹き込まれたものです。この Edenville という場所には知識がないのですが、インターネットで調べたところ、NY州とのこと。和名「エデン閃石」というのの産地だそうで、その筋に方には有名な場所だとか」とコメントしました。
 バド・パウエルのディスコグラフィを見たところ、フランスのEdenville、パリから真っ直ぐ西に向かった端にある、恐らくは観光地だと思います。ここのホテルで録音されたのが、Earl Bud Powell Vol.8(Holidays in Edenville,64)でした。またこの日の録音は、フォンタナで発売されていた作品にも一部が吹き込まれております。
 レコーディング・データによれば、次の録音は翌月9月にNYで吹き込まれ、ルーレットから「The Return Of Bud Powell」というタイトルで発売されたものです。このタイトルから伺える通り、パウエルは再びアメリカで活動し始めたのです。

 従ってEarl Bud Powell Vol.8(Holidays in Edenville,64)はフランス滞在の最後の記録となります。今回私はこの作品を繰り返し聴き、その中でも渋いスタンダードの「If I Loved You」と「I Remember Clifford」を何度も聴きました。何かを決心したかの強い思いがひしひしと伝わってくる演奏でした。CDのプログラムとリピート機能を使って、何度も繰り返されるこの2曲の演奏を止めるのが怖くなる思いでした。
 パウエルの演奏は長年聴いてきており、「今日の1枚」でも20枚取上げてきましたが、今回パウエルの凄みが分かったような気がします。

 さて余談ですが、NYにもEdenvilleがあることを最後に付け加えておきます。

(掲示板掲載 2016年7月19日から3日間)