録音日 1985年7月2日(ジャケ記載データ)
Falling In Love With Love が収録されている作品をつまみ食い
つまみ食い前
キース・ジャレットがスタンダーズとしての活動を始めたのは、私がジャズを聴き始めて割とすぐのことでした。私は、スタンダーズでキースに入っていったのです。恐らくソロ演奏の作品から入っていったら、聴き始め10年ほどは触れずにいたミュージュシャンかもしれません。なにしろこのスタンダーズには、ジャズ聴き始めから惚れてしまったドラマーであるジャック・ディジョネットが入っているからです。
このライブ作品は、スタンダーズ2集が発売されて直後の演奏になります。「今日の1枚」では、1999年9月30日に取上げました。
今日は「Falling In Love With Love」を中心に聴いてみます。
つまみ食い後
スタンダード曲のテーマを冒頭から素直に演奏する場合と、アドリブを多用しながら僅かにテーマの匂いを感じさせながら演奏を始める場合の2種類のパターンが、スタンダーズにおけるキースさんの特徴の一つであります。
後者の場合、私には落語のマクラに感じます。その落語のマクラですが、私の中で大別すると、その場での雰囲気で喋り出す場合と、練りに練ったものを語り出す場合に分けられます。前者の代表格は談誌師匠、後者は若手(と言っても46歳ですが)の三遊亭兼好でしょう。
さてキースさんのマクラですが、”談誌”タイプだとするのが一般的なのでしょうが、私には”兼好”タイプに思えてなりません。あれは練りに練ってステージに上げているはずです。
こんな事を考えながら聴き始めましたが、「Falling In Love With Love」はマクラ無しの演奏パターンでした。3人でアップ・テンポでテーマを演奏し始め、すぐにキースのアドリブへ移ります。微かな瞬間にテーマが顔を見せる演奏なのですが、これはこの恋に終りなど来ないと考えている恋人同士の一つ一つがスリルであるさまが、浮かび上がってくるものです。続いて緊張感溢れるベース・ソロですが、ちょっかいを出していくキースに対して、こういう場面はこうするんだとの恋愛百戦錬磨のようにドラムが絡んでいきます。そしてピアノとドラムの8小節交換となりますが、燃え上がった恋人同士の言葉の重なりに思えるものです。最後は随分あっさりしたキースのテーマ演奏で終わっていきます。
久しぶりに聴いたスタンダーズ、堪能しました。
(掲示板掲載 2016年8月27日から3日間)