Art Tatum
The Tatum Group Masterpieces

録音日 1956年9月11日(ジャケ記載データ)
Night And Day が収録されている作品をつまみ食い

つまみ食い前

 アート・テイタムとベン・ウエブスターががっぷり四つで組んだこの名盤は、2009年3月12日に「今日の1枚」で取上げました。「コーヒーが似合いそうなサックスに、実直なピアノ。幸せな瞬間でした」でしたと、私は書いておりました。この時代、ジャズ黄金期の名人の演奏には、ハズレは無いと思っています。3年に一回は取り出して聴いている本作品、「Night And Day」も名演にきまっていますが、改めて聴いてみます。

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つまみ食い後

 40歳過ぎても素敵な男性、女性からもてるだけではなく男性かも好印象持たれる男には、粋なところが必ずあると思います。
 例えばお酒でいうならば、高級ホテルのラウンジでシングル・モルトのスコッチを飲む姿が絵になり、また屋台での熱燗コップ酒もしんみりときまるような粋さであります。
 人生経験が豊かだからこそ、酸いも甘いも知ってきたからこそ、人の痛みも分かるからこそ身に付くのが、粋だと思っています。私が身近でそう感じた人間は数少ないものの、やはり憧れる姿でありました。

 そんな粋な姿を、このテイタムとウエブスターの演奏に強く感じました。ジャズマンとして様々な場面を得てきたからこそ醸し出せる、粋な演奏です。20代の尖がった演奏というのは多くのジャズマンが素敵な演奏を残していますが、40過ぎて素敵な演奏を残せるのは粋であるからこそでしょう。
 「Night And Day」を聴くと、この二人は初対面の女性とのダンスも、素敵にきめる方なのだとも感じました。相手の気持ちに合わせて、踊りも会話もリード出来る人間なのだろうと、映画のシーンが頭に浮かんできました。

 そんなことを書いている私は、50を過ぎても、粋にと思いながら野暮ったいだけの人間ですが、この作品を聴いている時間だけは、粋な人間になれた気がしました。

(掲示板掲載 2017年3月18日から3日間)