録音日 1957年6月11日(ジャケ記載データ)
Just In Time が収録されている作品をつまみ食い
つまみ食い前
それにしても、ひどい感想を書いたもんだ。「よく言えば、リラックスしたロリンズ。悪く言えば、集中力のないロリンズ」などと、2006年8月24日に本作を「今日の1枚」で取り上げた際に、私は書いてしまいました。集中力なしに本作を聴いたのは自分なのに。それでも「しかしそんな演奏でも、愛着が湧いてくるところが、ロリンズの凄さなのでしょう」と続けて書いたので、多少は救われます。
数多あるロリンズの作品の中での本作の位置づけは、どんなものなのでしょうか。この1957年もロリンズ大活躍の年であり、リーダー作としては「Way Out West(Contemporary)」「Sonny Rollins, Vol. 2(Blue Note)」「Newk's Time(Blue Note)」を吹き込み、そして11月には「A Night At The Village Vanguard」を残しています。そんな中で本作は、ソニクラをバックに軽快に楽しくスタンダードを演奏した作品とのことで、諸作の中では話題に上らない作品かと思います。
「Just In Time」のレコーディングとしては、ロリンズ唯一の作品である本作を、今日は集中して聴いて見ます。
つまみ食い後
1988年に私が購入した国内盤CDで封入解説を書いているのは、内藤遊人さんです。1988年春に来日したロリンズに、当時の新作である「ダンシング・イン・ザ・ダーク」について「あーしたポピュラーな曲をいったいどのような解釈に変えて演奏するのだろう?」と聴いたところ、ロリンズは「アメリカに帰ったらレコーディングのときのメモを送ってあげる」と言ったそうです。実際に内藤さんに送られてきたのは譜面でした。市販のメロディ譜に、ロリンズは様々な書き加えをしていたとのことです。
このことからロリンズは様々な解釈を加えて演奏しているが、その演奏を聞けば聞くほどその曲が楽しくいい曲に聞こえてくる、ロリンズほど理論の影を感じさせないミュージシャンはいないと、内藤氏はコメントしています。
ロリンズ節の豪放さと楽しさ、ロリンズ節のストレートな憂い、この背景を理解した気がします。やたらに難しい表現をしがちな、しかしながら過去の偉人の焼き直しのようなミュージシャンに、この内藤氏の文章を読ませたいです。
「Just In Time」をロリンズ節で楽しく聴かせる演奏が、本当に素敵でした。またそれに続く「Toot, Toot, Tootsie」は、隠れたスタンダードであります。またこの曲は変則的な構成になっているとのことです。こんな曲を拾い上げ、楽しい曲に仕立て上げてジャズファンに提供するロリンズに、真のミュージシャンの凄みを感じました。
(掲示板掲載 2018年6月18日から3日間)