Kenny Barron
Scratch

録音日 1985年3月11日(ジャケ記載データ)

ソラ ジャケ作品をつまみ食い

つまみ食い前

 本作の裏ジャケに「25th Anniversary Series」と書かれており、頭を悩ましました。ジャズファンにはお馴染みのエンヤ・レーベルは1971年の設立であり、本作は1985年3月の録音であり発売、そして私が持っているCDは1999年に最初されたものです。エンヤの営業年数からの25周年ではないし、1943年生まれのバロンとも関係なさそうですしと考え込みました。ライナー・ノートは1985年発売時のものであり、その中にはドラム奏者のフランスジャズ界の重鎮ダニエル・ユメールがプロ活動25年以上との記述がありますが、1999年再発の時点では40年となっているわけですし。

 この「25周年記念」には降参して、本作を2005年3月3日に「今日の1枚」で取り上げた際の私の感想を読み返しますと、バロンのピアノと、ホランドのベースに強い感銘を受けた事を書いておりました。

 このジャケは、写真とイラストの合わせ技のようです。青空に浮かぶ雲が薄らと焼けている様子は、ソラ資料には記述がありませんでした。私はこの空もイラストと思ったのですが、クレジットによれば写真とのことです。

 いつかはこんな空に出逢いたいと思いながら、今回のつまみ食いでは重鎮ユメールとバロンの絡みが燃えている瞬間を味わえればと、願っています。

1jsky06

つまみ食い後

 泰然とした流れのピアノ・トリオの演奏ですが、その奥に感じられる三者のせめぎ合いには、聴く者が引き込まれる凄みがあります。それは気分の良い青空の中にも、常に変化が起きているのに似ており、まさに演奏内容に相応しいジャケと言えるのでしょう。

 ドラムの録音レベルを低めにしているのですが、自然の流れのような演奏に耳を傾ければ、そこには名手ユメールとバロンの駆け引きの妙があります。バロン作の「Water Lily」、池に浮かぶ睡蓮の鮮やかさを描きながら、しかし絶えず変わっていく池の様子を感じさせる演奏でした。


(掲示板掲載 2020年4月12日から3日間)



参考資料 高橋健司著、空の名前(改訂版)、東京:角川書店、2004年
(文中ではソラ資料と表記)