Marion Brown
Offering

録音日 1992年10月7日(ジャケ記載データ)

イス ジャケ作品をつまみ食い

つまみ食い前

 「つまみ食い」で「イス」をテーマにした際にイスの種類を調べ、その中にスツールがあり、そして真っ先に思い浮かんだのが、このマリオ・ブラウンさんのジャケでした。でも改めてジャケを見れば、背もたれがあるのでスツールではありませんでした。

 私はひねくれた性格かもしれません。そんなひねくれ時期が私に度々訪れるようで、2001年2月12日に本作品を「今日の1枚」で取り上げた時期も、そんなひねくれ時期だったようです。「コルトレーンから引き継いだスピリチュアルな面が伺える1枚だが、体裁だけ」「かつてのマリオンはこんなもんじゃなかった」「没後25周年にこんな演奏をされたんじゃコルトレーンも、タマランな」とのものです。ひねくれの極みのような感想です。

 今回のつまみ食いでは、素直な自分で本作に向かい合いたいです。

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つまみ食い後

 私が持っている紙ジャケCDでは、岩浪氏が封入解説を書いています。そこで氏はコルトレーンとの関連付けで、マリオさんを語っています。録音された1992年はコルトレーンの没後25年だったことを書き始めとして、長い文章です。

 19年ほど前に本作を「今日の1枚」で取り上げた際に私は、この岩浪氏の文章が頭にあり、そこで言及している1965年の「アセッション」と比較して、本作を聴いてしまったのでしょう。

 1992年は「アセッション」から27年、ジャズを含めて文化にも大きな変動をもたらした1970年代を経て20年の時間が経っていた1992年、61歳となっていたマリオさんの種々相な経験が、本作に表現されている演奏と感じました。静かな落ち着いた気持ちを軸にしながら、生きる世界の真義を表現しているようです。表現方法の違いは時の流れ、時の流れを素直に吸収したマリオさんの演奏に聴き入りました。

 この時期よりマリオさんは絵画などに力を入れていたとのこと、そして2000年代に入ると病と闘っていたとのこと、そして2010年に深い眠りにつきました。

 本作からは音楽家マリオさんの、最後の輝きがあります。


(掲示板掲載 2019年11月21日から3日間)


参考資料「Brutus Casa特別編集 超・椅子大全!」東京:株式会社マガジンハウス発行、2005年(文中ではイス資料と表記)