Georges Arvanitas
3.a.m

録音日 1958年9月11日ジャケ記載データの翌日

イス ジャケ作品をつまみ食い

つまみ食い前

 2019年の10月にこの作品を「マイク・ジャケ」でつまみ食いしたので、「イス・ジャケ」で取り上げるのは躊躇しました。しかしながら、このジャケに映るピアノ椅子、これだけ高くセッティングしているのは、なかなかお目にかかれません。この「イス・ジャケでつまみ食い」企画で、ピアノ椅子を取り上げるのはこれで9枚目となりますが、このアルヴァニタスさんの初リーダー作品でのピアノ椅子の高さ具合は飛び抜けています。

 1999年10月16日に「今日の1枚」で取り上げた際にも、昨年10月につまみ食いした際にも、このピアノ・トリオ作品を絶賛しました。それはそうでしょう、欧州ジャズ界の名ピアニストのアルヴァニタスさんがダグ・ワトキンスとアート・テイラー組んだ演奏なのですからね。

 ということで今回の「イス ジャケ」でつまみ食いでは、何に焦点を当てて聴こうかと考えましたが、高くセッティングした椅子に似合う、気合を入れた瞬間を感じ取れればと、思っています。

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つまみ食い後

 アルヴァニタスさんが退役後の1954年にパリに出てくるまでの情報は、今のWikipediaにも詳しくは掲載されておりません。私が確認できるものでは、1998年発行の「ヨーロッパのジャズ・ディスク1800」にある情報だけです。それによると1931年にマルセイユで彼は生まれ、少年時代からジャズに親しみバップも覚えていき、ドン・バイアスやジェイムズ・ムーディとの共演も経験し、兵役でヴェルサイユに駐在していた際にもジャズクラブで演奏をしていたそうです。

 その後の活動は各資料にあり、パリのクラブでの演奏を行い、また米国からパリに来たジャズマンたちとも共演を重ねていき、本作品となったようです。

 本作に至るまでアルヴァニタスさんには結構な苦労があったと思いますが、多くの貴重な経験をすたことでしょう。そこでの自分ならこんな作品を残すとの思いが重なっていき、ここに成熟したのでしょう。またダグ・ワトキンスとアート・テイラーという大物が力を入れた演奏をしており、これはアルヴァニタスさんの日頃のお人柄の良さからのことなのかと思いました。

 ベースとドラムの静かな息遣いが冴える「What's New」、その後半ではアルヴァニタスさんのピアノが光り始め、このスローなスタンダードを豊かな色合いにしていき、ジャケに映る彼の意気込みを感じました。


(掲示板掲載 2020年11月12日から3日間)


参考資料「Brutus Casa特別編集 超・椅子大全!」東京:株式会社マガジンハウス発行、2005年(文中ではイス資料と表記)