David Murray Big Band

録音日 1991年3月5日(ジャケ記載データ)

イス ジャケ作品をつまみ食い

つまみ食い前

 私の中学時代の部屋には、1本のマイクの前でミック、キース、ロニーの三人がシャウトしているポスターを貼っていました。今日つまみ食いするマレイのビッグバンド作品のジャケを見て、何故だかそのポスターが頭に浮かびました。スツール一脚に、恰幅がよくなり始めているマレイと、このビッグバンドを指揮するブッチ・モーリスが腰をかけています。ロックもジャズも、生存競争が厳しいのでしょうか。

 本作を「今日の1枚」で取り上げたのは、1999年11月19日のことでした。このサイトでマレイ特集を始めて、マレイのリーダー作としては49枚目に取り上げた作品でした。そこでの感想を見てみますと、ビッグバンド作品であることへの私の戸惑いがあるものでした。

 それから20年以上経過し、少しはジャズが分かってきたかなと自惚れている今、この作品がどのように私の中で響くのか楽しみです。

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つまみ食い後

 私にとってこの作品は、ポール・ゴンザルベスの存在を意識した作品であり、この後にエリントン楽団のニューポートでのライブ盤(2000年3月21日)を買った思い出があります。

 そのニューポートでのライブでのゴンザルベスの27コーラスのソロをベースにした「Paul Gonzalves」が冒頭に収録されており、「Lester」と「Ben」がそれに続きます。マレイが愛するサックス奏者に捧げたこの三曲が、様々なアイデアを盛り込んだアレンジによって、一層表情豊かになっていきます。この部分がビッグ・バンドの魅力なのでしょうし、私もそれを素直に楽しめるようになってきました。

 本作品にマレイが書いた文章の一節を引用して、今回のつまみ食いを終えます。

 「90年代にビッグ・バンドのアルバムをレコーディングすることは、ラップのコンサートでDJのかわりにアコースティック楽器のミュージシャンを使うようなものだ。なぜかビッグ・バンドのアルバムを作りたがらない風潮があるように思えるのだが、だからこそ作るべきと思った。私が音楽で言いたいことを最もパワフルに、かつ深く述べることができるからだ。それがファンの心に言いたいことを伝える一番の近道だと思うのだ」


(掲示板掲載 2020年7月15日から3日間)


参考資料「Brutus Casa特別編集 超・椅子大全!」東京:株式会社マガジンハウス発行、2005年(文中ではイス資料と表記)