Brad Mehldau
live at The Village Vanguard

録音日 1997年7月29日(ジャケ記載データ)

イス ジャケ作品をつまみ食い

つまみ食い前

 「1970年台以降はジャズに名盤無し」というような言葉を、時折耳にします。「1980年台」だったりもするのですが、私にはなんとなく分かるような気もする言葉です。そんな中でも、今回つまみ食いするメルドーのこのライブは、ピアノ・トリオ・ライブの名作という評価が、一般的なのでしょう。

 2000年7月21日に「今日の1枚」で取り上げた際に私は、「超絶テクニックを駆使しての6曲70分超の演奏なのですが、空回りする部分もあります」との感想を書きました。これはまだまだ私の聴く耳が未熟だったからの感想だと思いますので、聴く耳が普通にはなったのかと願う今では、緊張感が続く70分になるのではと、楽しみにしています。

 「イス ジャケ」でつまみ食いの中でピアノ椅子を取り上げるのはこれで5枚目になりますが、その椅子が悲鳴をあげるほどに奏者の力が入っている姿は、この作品がピアノ椅子でピカイチであります。

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つまみ食い後

 よーく聴けば「Young And Foolish」、はじめから「Moon River」、この2曲が今回のつまみ食いでのお気に入りとなりました。静寂と躍動感、相反する思いが交差する中で、聴き入る内容でした。

 またこの作品は、オーディオ的な楽しみも与えてくれます。音量を部屋のエアボリュームの許容域まで上げて聴けば、会場にいるような空気感を感じます。考えてみればこの作品を「今日の1枚」で取り上げた2000年は、私の「今日の1枚」20年以上の中で、貧しい装置でジャズを聴いていた時期でした。そんなことも20年前の感想につながったのかもしれません。

 ジャケにあるメルドーさんの熱演ぶりは、本作の中身も同様でありました。


(掲示板掲載 2020年5月12日から3日間)


参考資料「Brutus Casa特別編集 超・椅子大全!」東京:株式会社マガジンハウス発行、2005年(文中ではイス資料と表記)