The Outer World (take 9) (Al Cohn)
(4分11秒)
【この曲、この演奏】
テナー・サックスでこのセッションに参加しているアル・コーンが書いた曲で、コルトレーンの演奏記録は本セッションだけ(資料07)です。
重厚なホーンのアンサンブルとブレイキーの太く切れ味良いドラムスが重なり合う演奏で、これを目指してアル・コーンが曲を書き編曲を行ったのでしょう。この中で、コルトレーンとシュリーマンがソロを取っています。コルトレーンのそれは、この重厚な中で、さらに重厚な輝きを発するものです。そしてシュリーマンのは、この雰囲気に中では厳しかったかなと、私は感じました。
このセッションでの5曲目となるこの演奏ですが、ここではブレイキーにたっぷりのソロ・スペースがあればなと感じました。
さてこの演奏はテイク9であり、それまでの8回の中に二つの完奏テイクがありますので、それに触れておきます。
-18 (take 2)(3分15秒)
20秒のスタジオ内トークと音出しの後に、2分55秒の演奏となっています。その演奏はリズミカルと重厚さを両立させようとのアレンジですが、本テイクに比べればどっちつかずのものに感じます。ソロはコルトレーンだけであり、これは雰囲気を壊さない良い出来でしょう。このソロの後には、重厚さと求めたアーン・アンサンブルとなっております。
-21 (take 5)(3分30秒)
26秒のスタジオ内トークと音出しの後に、3分4秒の演奏となっています。その演奏ですが、心地よい重厚さとなっており、本テイクに近づいてきているのを感じます。さらに良くできると考えて、この後に3つのテイクを挟んで、本テイクとなっていきます。ソロはコルトレーンだけですが、私はテイク9の本テイクでも、コルトレーンだけで良かったのかな、シュリーマンではなくブレイキーのソロがあればなと感じました。
【エピソード、コルトレーン語録 その9】
「実を言うと、ジョン(・コルトレーン)はエルヴィン(・ジョーンズ)の隣で(ドラムを)叩いてくれるミュージシャンを探していて、私はその誘いを断ったんだ。ジョンとは一九六四年に3度共演していたけど、この誘いを受けていたら、親友のエルヴィンが失業することになると思ってね。
(中略)ジョンが静かに近づいてきて言った。『サニー、調子はどうだい? ちょっと叩いてみないか?』と。ところがその晩のエルヴィンはすごい出来で、私はその場で凍りついたよ。(エルヴィンが)ステージから退き、私がシットインしようかという場面で、(私のバンドのリーダーである)アルバート・アイラーが、『ホントに演る気かい?』って聞いたんで『ああ』って答えたよ。マッコイの音は違って聴こえたし、ジミーは私と一緒に歌っているようだった・・・うまくいったんだ。そのうちエルヴィンが飲み物を手にして戻ってきて、席についた。彼はとても楽しそうだった。私はステージを降りてエルヴィンと一緒に酒を飲み、それで親友になった。それ以来、エルヴィンは私のことを”大物(ビッグマン)”と呼ぶようになった。
(中略)あとでジョンに言ったよ。『エルヴィンはもうおれ以外、君とプレイできるやつはいないと言ってるが、おれは彼との友情を壊したくないんだ・・・君のせいで、彼に憎まれたくはないんだよ』。するとジョンは静かに腰を下ろして、こう言った。『サニー、私には無数のリズムが聴こえるんだ・・・』」
サニー・マレイ、二〇〇〇年十一月三日、パリにて、ダウン・ウォーバートンとのインタヴュー
(資料04より)
【ついでにフォト】
2009年、みなとみらい
(2022年3月23日掲載)