19560511-05

It Could Happen To You
(Burke - Van Huesen) 
(6分40秒)


【この曲、この演奏】

 資料14によればこの曲は、1944年公開の映画「そして天使は歌う」の主題歌と知られるラブソングで、明るく軽快なナンバーですが、バラッドとして取り上げられることも多い曲です。ジョー・スタッフォードやジューン・クリスティなどの歌手にも愛された曲ですが、パウエルやソニクラなどのピアニスト、ロリンズやJ.J.ジョンソンなどのホーン奏者にも好まれた曲です。

 そんな大スタンダード曲ですが、コルトレーンの演奏記録はこのセッションだけです。またマイルスもこのセッションのほかには、1952年にマクリーン入りで録音されたもの(後年フレッシュサウンドから発売)だけです。

 さて演奏ですが、マイルスのミュート・トランペットの軽快な足取りで始まります。この前の曲、4曲目の「Something I Dreamed Last Night」ではお休みとなったコルトレーンは、光風霽月の心境な演奏であり、一歩成長した姿を聴き取れます。資料09では「多少まとまりのないソロ」と評されていますが、私は楽しいコルトレーンの姿と感じました。


【エピソード、少年時代の気晴らし】

 アンダーヒル通りとワシントン通りが交差する所にヘンリー・ホテルがあり、その中にドレーク夫人の洋菓子店があった。ハイポイント時代のコルトレーン少年にとっては、ここが気晴らしの場であった。小さな子供から青年まで多数の黒人がここを好んでいて、仲間同士が喋りあう場所であったのだ。ドレーク夫人は優しい方で、金の有る無しに関わらず誰でも歓迎し、決して子供達を外に追い出すことはしなかった。ドレーク夫人はコルトレーンを可愛がってくれ、ハイスクール最後の2年間、コルトレーンはここで客にソーダ水を出す仕事をやらせてくれていた。

 これは資料01からの引用だが、そこではコルトレーンは、多くの黒人の子供達が宿命として受け入れざるえなかった貧乏のどん底を、一度も経験しなくてすんだとしている。


【ついでにフォト】

19560511-05

2006年、香港


(2019年1月28日掲載)