How Am I To Know ? (Parker - King)
(4分40秒)
【この曲、この演奏】
ジャック・キング作のこの曲は、1929年の映画「ダイナマイト」の主題歌です。スタンダード本資料14,15には掲載されていない曲ですが、ビリー・ホリデイやローズマリー・クルーニーが取り上げており、1990年代に入ってもシャーリー・ホーンが取り上げています。
コルトレーンがこの曲を演奏しているのはここでの演奏と、マイルス・クインテットでの1956年に演奏の記録があるだけです。
YouTubeで聴ける1944年のビリー・ホリデイの歌は、恋に目覚めた女性の思いをゆったりと歌い上げたものです。一方でマイルス・クインテットの演奏では、随分と早口になっており、同一曲と思えないものです。色恋百戦錬磨のマイルスのミュート・トランペット、その一方で女性の前ではカチンカチンになってしまう男のようなコルトレーンのテナー・サックス、この対比を楽しく味わえる演奏でした。
資料09,11にも書かれていますが、マイルスは目立たないポップ・チューンを取り上げて、マイルス独自の色に染めて演奏していくのが上手く、それは晩年まで続いていました。ここでのコルトレーンは、マイルスのそんな姿を真面目に吸収しているようです。
【エピソード、父親】
コルトレーンの父親ジョン・ロバート・コルトレーンの仕事は、資料01では洋服の仕立て屋、資料05では洋服の仕立職人兼クリーニング屋と書かれている。仕事熱心で腕の良い職人だったとのこと。父親は息子コルトレーンにこざっぱりした服を着せ、行儀作法もしつけていた。そして音楽も好きだったとのことである。資料01によれば外向的で家庭人の父親は仕事が暇な時には親しい仲間を家に呼んで愛想よくもてなしており、バーボンを飲みながらウクレレを弾き歌っていたことが書かれている。ヴァイオリンも弾けたようだが、それは重要な会合の時だけとのこと。家庭でウクレレをバックによく歌ったのは「ザ・スイートハート・オブ・シグマ・チャイ」であり、近所のウォルター・フーバーはそんな時のコルトレーン様子を次にように語っている。
「ジョンはいつも父親のように弾きたいと言っていたものだ。そして父親の好きな歌がジョンの好きな歌だった。というのも、その歌がワルツ曲で、ワルツはその時に大流行していたからである」
【ついでにフォト】
2004年撮影、香港
(2019年1月2日掲載)