19640427-16

Bessie's Blues (John Coltrane)  (3分1秒)



【この曲、この演奏】

 この曲は伝説的なブルース・シンガー、そして偉大なる女性シンガー、ベッシー・スミスに捧げた(コルトレーン作の)ブルース・ナンバーです。(資料09)

 この日にはこの1回の録音だけでしたが、A(S)-66 「Crescent」には収録されませんでした。クレッセント用二度目のセッション、6月1日のセッションでのこの曲の演奏が、本テイクとなったのです。

 さて演奏ですが、本来ならばこの黄金カルテットのお得意分野の一つのアップテンポの軽快ブルースですが、静かに内を向く演奏が続いた本セッションではバラバラの演奏となりました。まずコルトレーンとリズム陣が息が合わず、さらにはリズム陣の中でマッコイのピアノが浮きっぱなしなのです。この日にさらにもう一回とならなかっただけの、没テイクです。



【エピソード、バーバラ・ガードナーの記事 その15】

(1962年発表の文章)

 休むこと、満足することを知らないコルトレーンは、今の状況を不満には感じていないものの、完全に満ち足りた気分というわけでもないようだ。彼は今でも、自分が不完全であるという思いを拭いきれずにいる。だからこそ、彼は一九五七年に手にした成功を切り捨て、より自己満足的な方向へと進み始めているのであろう。ただ、どこへ行こうと、満足のいく答えは保証できない。それは彼にも分かっている。

 「これという曲が見つからないんだ」と彼は言う。「私は全てに耳を傾けている。他のグループのレコード、共演ミュージシャンの音楽を聴いて、探し物を見つけようとしている。バンド・メンバーから学ぶことも多い。エリック・ドルフィーはとんでもないミュージシャンだ。何種類ものホーンをプレイできる。彼が探究し実験する中で、私は多くを学んだ。ただ、欲しいものはまだ見つかっていない」

(資料04より)



【ついでにフォト】

tp10001-074

2010年 ペナン、マレーシア

(2021年5月19日掲載)