19580911-04

I Mean You (Thelonious Monk)
(13分31秒)



【この曲、この演奏】

 モンク作の名曲であるこの曲のコルトレーンの演奏記録で資料07にあるのは、本セッションのものだけです。

 収録されている5曲の中で、この曲の演奏が最も長い演奏時間となっています。

 陽気なモンクのピアノが光るテーマが1分ほど演奏され、コルトレーンの6分に及ぶソロと続いていきます。ここでのコルトレーンの演奏場所は、ネイマが用意した1本のマイクから離れており、サックスの録音レベルは低いものになっているのが残念な点です。しかしその演奏には、1958年のコルトレーンの姿がはっきりと映し出された演奏であり、素敵なものです。

 コルトレーンのソロではお休みだったモンクは、コルトレーンのソロがお気に召したのか、朗らかなソロを3分間に渡り披露しています。そしてベース・ソロに移る予定だったと思いますが、ベース演奏にモンクが絡んでいく演奏内容が1分強続きます。

 ドラムスのソロもあり、テーマとなって、演奏は終わっていきます。ここでの長尺のコルトレーンからモンクへと続くソロは、この日のハイライトの一つでしょう。



【エピソード、ファイブ・スポットを録音しなかったキープニュース その1】

 リヴァーサイドは何故にコルトレーン入りモンク・カルテットのファイヴ・スポットを録音しなかったのか、1987年に著したオリン・キープニュースの文章を、資料18から引用する。


 この公演(1957年のファイブ・スポット)は、ニューヨークのクラブ・シーンへのモンクの凱旋公演であり、きわめて偉大な才能を持つ二人のジャズメンが組んだ輝かしいペアリングであった。そして私は、もっと広範囲にわたってこのグループをテープに収録しなかったことを非常に遺憾に思っている。だが、その収録については、他の人間のプライドと個性が、私の邪魔をしたのだ。

 当時コルトレーンはプレスティッジと契約していた(アルバム『モンクス・ミュージック』の録音の際にも、彼を使えるよう手配するのは難事だった)。プレスティッジは、いうまでもなく、モンクがリヴァーサイドにやってくる直前まで在籍し、不遇と冷遇を味わわされた会社であり。

 私がボブ・ワインストックに、モンクとの共演によるトレーンのレコーディングを打診したとき、彼は意義を唱えなかった。交換条件として私たちは、コルトレーンのサイドマンとしてピアニストを提供する用意をしていた。しかしながらセロニアスは、きわめて頑なな態度を守り、いかなる事情の下でも、プレスティッジのために何事かをなす意志は全くないという。私はその立場を変えさせることができなかった。


 以上は直接的にファイブ・スポットの録音に触れていないが、モンクとコルトレーンに関してプレスティッジが関わることの難しさを表した、キープニュースの言葉である。



【ついでにフォト】

tp13025-059

2013年 みなとみらい 


(2022年6月13日掲載)