19570915-19

Locomotion  (John Coltrane) (7分12秒)



【この曲、この演奏】

 コルトレーン作のこの曲ですが、資料07によれば演奏記録は本セッションだけです。

 曲名の意味は「移動(力), 運動(力)」であり、蒸気機関車の名前としても知られています。またポップス界でもこの曲名でのヒット曲があり、キャロル・キング作のものでした。私は日本のゴールデン・ハーフの歌で知り、その翌年にロック少年となった私はグランド・ファンク・レイルロードのものでこの曲に馴染んでいました。

 さてコルトレーンが1957年9月15日にヴァンゲル・スタジオで演奏したのは、当然なながら違うものです。

 ドラムスの力強い響きで始まるアップテンポのこの演奏、テーマでは「ユニソンで繰り返されるテーマにコルトレーンが絡んでいく」(資料09)もので、蒸気機関車が走る姿に未来の繁栄を映している人々の姿が浮かぶような明るさがあります。

 そして圧巻は各位のソロでしょう。コルトレーン、フラー、モーガン、ドリュー、そして”フィリー”ジョーと続くソロには、希望に向かって邁進する迫力と熱があります。

 名盤のB面の頭にこの演奏が収録されました。



【エピソード、各資料からこのセッションについて その1】

 プレスティッジと話合いがついて、トレーンはブルーノートで一枚だけレコードを作ることとなった。ミュージシャンと曲目は彼自身が選び、六重奏団を編成、一九五七年九月十五日にレコーディングを行った。コルトレーンのような完全論者が、ときには人並みの不安にかられるといえば、何か逆説めいてくるが、それはアーティストのすべてに共通した不安で、彼らは次の仕事、次の収入がどこから入ってくるのかいつも知っているわけではないのだ。この不安を提示するかのように、コルトレーンはアルバムのタイトルに不安という名の旅をするトレイン(Train = 汽車)を持ってきた。自分のあだ名としての”トレーン”(Trane)ではなかった。だが汽車という意味でその言葉を使うのはこれが最初で最後であった。というのは「ブルー・トレイン」(Blue Train)が、彼の代表的なエイト・コーラスのソロとともに大ヒット、音楽的にも経済的にも大成功を収めたため、その後彼は”トレーン”を自分独特の呼び名として自信を持って使うことになったからである。
(資料01からそのまま引用)



【ついでにフォト】

tp10008-156

2010年 タイプーサム、ペナン、マレーシア


(2022年2月23日掲載)