19570702-02

Nutty (Thelonious Monk)  (6分35秒)



【この曲、この演奏】

 モンクの有名曲であるこの曲ですが、コルトレーンのスタジオ録音は本セッションだけです。モンクにカルテットでのファイヴ・スポット長期出演では、この曲は何度も演奏されていたのでしょう。この年の11月29日のカーネギー・ホールでのライブ盤には、この曲の演奏が収録されています。

 さて演奏ですが、この曲が持っているウキウキワクワクの魅力を存分に伝えるテーマとなっています。コルトレーンのソロが続きますが、ここではモンクはお休みです。このソロを聴いていると、口ずさみたくなる気分をサックスを通して表現しているように感じます。またこのソロには、後に言われる「シーツ・オブ・サウンド」へ向かっていくコルトレーンの姿も感じます。そうすると、口ずさみたくなる気持ちを最大限に表現する方法として「シーツ・オブ・サウンド」になっていくのかなとも感じます。

 この後はモンクのソロとなりますが、コルトレーンが築いた空気感を壊さないように、慎重に入っていく、ソロの冒頭部が印象的です。

 さらにこの曲に限ったことではありませんが、ウェアのベースのバッキングも聴き所でしょう。プレスティッジではポール・チェンバースと組むことが多いコルトレーンですが、この二人のベース奏者の個性の違いも興味深いところです。

 資料09にある解説も引用しておきます。

 「ここでは16分音符を駆使してモンクのテーマを納得のゆくまで展開している。こういった理詰めのソロのとり方はモンクとの共演の大きな成果と言えるだろう」



【エピソード、リヴァーサイドとコルトレーン】

 この作品は、コルトレーンがプレスティッジを去り、更にはアトランティックを去ってインパルス!に所属していた1961年に発売された。リヴァーサイドのプロデューサーであるオリン・キープニュースは、コルトレーンとプレスティッジの契約が終了したら、1959年に入ったらコルトレーンと契約してこのセッションでの録音を発表しようと思っていたのであろう。資料18には次のオリン・キープニュースの記述がある。

 私はその頃(このセッションの時期)、トレーンをもうすぐリバーサイドの名簿に加えられると期待していた。そんなわけで私たちは、技術的には不適当な、このセッションを1回だけ持った。その後コルトレーンは、これ以上録音するのを厭がった。そしてしばらくすると、彼はマイルス・デイビスのグループに再参加するため、モンクの下を去ってしまった。カルテットの遺産として、このワン・テイクによる3曲のみを残したままで。

 なお「技術的には不適当な」とは何を指してのものかは不明である。この時期のリヴァーサイドではステレオ録音に向けての試行錯誤が始まっていた時期のようであるので、録音設備を指してのことなかもしれない。この日の3曲は、モノラル録音が残っている。



【ついでにフォト】

tp09002-032

2009年 みなとみらい


(2022年1月28日掲載)