Venus (John Coltrane) (8分25秒)
【この曲、この演奏】
「金星」と名付けたこの演奏ですが、資料07によればこの曲名での演奏記録は、このセッションだけです。
神秘の響きのコルトレーンの鈴から始まり、アリのシンバルが加わり、30秒過ぎからコルトレーンのテナーが登場してテーマ演奏となります。希望と夢を愛を込めて響かせているコルトレーンのテナーに、アリは全神経を集中させてブラシによる演奏で合わせています。
5分過ぎにコルトレーンが高音を連発して静から動へ演奏が移っていきます。これは30秒ほどのものですが、8分強のこの演奏の良いアクセントになっています。
最後に再びテーマをコルトレーンが演奏し、そして鈴とシンバルの演奏となり、終わっていきます。
【エピソード、二人だけでの演奏】
このセッションは計画的に行われたものではなかった。コルトレーンが一九六六年から一九六七年にかけて立て続けにスタジオにグループを集めてレコーディングしたのは、メンバーのために収入を確保しなければならないのに、体力的にツアーができる状態ではなかったためだとする指摘もある。「インターステラー・スペース」のレコーディングのとき、アリはいつものセッションだと思ってルディ・ヴァン・ゲルダーのスタジオに出かけた。友人のジミー・ヴァースとともにスタジオに着いたアリは、当然他のメンバーも来るものと思っていたが、誰も現れなかった。
「誰も来ないな」と彼はヴァースに言った。そこにコルトレーンがやってきた。
「誰もきていないぞ」と彼はコルトレーンに言った。
「ああ、今日はおれたち二人だけだ」
「何をやるんだい? 速いやつ、それとも遅いやつ?」
「何でも好きにやっていいんだ。さあ、やろう。おれはベルを鳴らそう。そっちは八小節のイントロから入ってくれ」
(資料03より)
【ついでにフォト】
2011年 タイプーサム、ペナン、マレーシア
(2021年10月25日掲載)