Stellar Regions (take 2)
(John Coltrane) (4分34秒)
【この曲、この演奏】
この曲についても、1回目の演奏で良しと思う内容でしたが、二度目の演奏を行っています。
さて演奏ですが、演奏構成は最初の演奏とほぼ同じですが、その演奏内容は「生きることの辛さの嘆き」と言ったものです。最初の演奏が「美と優しさを追い求め」と私は感じましたので、印象が大きく異なりました。そこが二度演奏したことのコルトレーンの狙いなのでしょう。
この二度目では弓弾きを行わなかったギャリソンの演奏も印象に残りました。
【エピソード、日本での記者会見、インタヴューから、その4】
7月9日 東京プリンス・ホテル、2階マグノリア・ルーム
共同記者会見 vol.4 資料17から引用
Q
また、コルトレーンさんへの質問で申し訳ないですが、コルトレーンさんは、今から10年後20年後、いったいどのような人になりたいですか? どのような地位を築きたい?
JC
ミュージシャンとしてですか? 人間としてですか?
Q
人間として?
JC
私は聖者になりたい。(アリスと共に笑う)
Q
聖者ですか?
JC
絶対に!
私見
1966年7月9日の記者会見の録音テープは、長らく存在が知られていなかった。「私は聖者になりたい」は、その活字が一人歩きしていたのかなと、私は思っている。
この日の記者会見でこの箇所は、児山氏の質問の真意を掴めずに、コルトレーンは質問者に聞き返していた。また児山氏の英語での質問は端的な質問とは言えず、コルトレーンは困ってしまったとしても当然かなと思う。
記者会見の録音テープが発見され、2011年にはそれを加えて日本公演のライブ盤が発売された。「I'd like to be a saint」、活字ではなく録音で聞くと、コルトレーンはこの問いを早く終えたく、軽い気持ちで何か様になるようなフレーズを言っているような感じを受ける。答えたのちにアリスと共にコルトレーンが笑っているのも、そのためであろう。
なお資料17では藤岡氏はこの笑いについて、次の注釈を書いている。
(コルトレーンの活発だった女性関係があり)「何をえらそうなこと言ってんの」「いや、もう懺悔したからね」・・・言下に含まれるアリスとジョンの心の会話。これが照れ笑いに繋がったのである。
この記者会見テープが早くから知られた存在であったならば、「私は聖者になりたい」発言の伝わり方は違ったものになっていたと思う。
【ついでにフォト】
2014年 みなとみらい
(2021年10月16日掲載)