19661111-02

Crescent (John Coltrane)  (26分11秒)



【この曲、この演奏】

 この曲も日本公演で披露されたものです。

 コルトレーンがテナー・サックスで3分に渡るテーマを吹いて、演奏が始まります。雄大な心で悲しみを包み込んでいくこの演奏は、傾聴ものです。

 続くのはファラオの雄叫びテナー・サックスでの、7分越えのソロです。日本でのインタビューでコルトレーンに対して、トランペットではなくトロンボーンではなく何故テナー・サックスをバンドに加えたのかとの質問がありました。コルトレーンの答えは、私はファラオを加えたのだ、でした。私には日本公演を聴いて長年経っており、またこのテンプル大学でのファラオの演奏を聴いて数年が経っていますが、いまだにコルトレーンの意図を掴みかねております。しかしながら、ファラオの刺激的な演奏がバンドの方向性に新たな道を作っていることは、ここでの演奏を聴いても実感できるものです。

 さて話がそれましたが、ファラオに続くのはアリスの5分弱のソロです。途中からパーカッションが加わっている様子が、この録音状態でもわかります。

 最後にはコルトレーンの11分の演奏です。刺激さを追い求める4分45秒、雄大な心に切り替えての3分35秒、そして後テーマの2分45秒でありました。



【エピソード、本セッションの存在】

 コルトレーンに限らずある程度の知名度のミュージシャンの発掘盤が登場した際の愛好家の反応は、次の二つとなる。

その1 ついにあのライブ(セッション)が登場したか!

その2 えっ、こんなライブ(セッション)があったの!

 2014年にVerve/impulse! からこのテンプル大学でのライブのCD2枚組が発売された際の愛好家の反応は、上の二つ両方のパターンがあった。

 1983年刊行の資料09にはこのライブの記述がなく、1995年刊行の資料06にも記述がなかった。特に資料06についてはその時点での最先端のコルトレーン資料であったので、1995年あるいはその前年まででは、この1966年11月11日のテンプル大学でのライブはその存在は知られたものではなかった。

 資料06が大幅に内容を見直されての、2008年刊行の資料07に、このテンプル大学でのライブの情報が掲載された。しかしながら資料07にはコルトレーン愛好家を興奮させる新情報が数多くあり、このテンプル大学でのライブが世間の愛好家にすぐに知れ渡ったということではなかった。

 さて2014年にこのライブがCD発売された際の反応だが、資料07を購入してこのライブの存在に気が付いた愛好家は「その1」の反応、他の愛好家の反応は「その2」であったのだ。



【ついでにフォト】

tp05061-060

2005年 香港


(2021年9月26日掲載)