My Favorite Things
(R.Rodgers - O.Hammerstein)(57分13秒)
【この曲、この演奏】
5月28日のヴィレッジ・ヴァンガードでの熱演のように、コルトレーンのライブでの定番曲ですが、日本公演でも取り上げています。2ヶ月前のヴィレッジ・ヴァンガードでは26分ほどの演奏時間でしたが、日本公演ではそれが倍になっています。
さて演奏ですが、ギャリソンのベース独奏から始まり、それは15分近く続くものです。ピッチカートで静かに入っていき、ギャリソンの世界を創っていきます。9分過ぎからはアルコとピチカートでの演奏を交互に繰り返し、13分半からは激しさを増していきます。
ピアノが入り、コルトレーンのテナー・サックスによるソロとなります。吸い込まれてていくその演奏の中で、ソロ開始から3分半と7分半ほどのところで、この曲の印象的なテーマのフレーズが出てきます。ソロ開始から10分半ほどで本格的なテーマの演奏となり、コルトレーンの11分以上のソロが終わっていきます。
続くのはファラオのテナー・サックスのソロで、14分弱のものです。ここでのファラオの演奏を聴いていると、この日本公演の中で大きく成長を遂げた26歳のジャズマンの姿を確認できます。
ファラオがテーマを吹き、アリスのピアノの8分ほどのソロへ続きます。
最後はやはりコルトレーンのソロで、ソプラノ・サックスによるものです。クライマックスに向かう雰囲気が漂う演奏、高い緊張感の中での演奏です。吹き始めから7分ほどでテーマの演奏となり、ソプラノでの9分ほどの演奏も終え、57分超えの演奏が終えていきます。
この日のライブ以降で、この曲の演奏で、その内容を確認できるものは二回あります。1966年11月11日のテンプル大学での演奏、そして1967年4月23日のオラトゥンジ・コンサートのものです。そのどちらも30分以内の演奏ですので、この1966年7月22日のこの曲の演奏はいろんな角度から興味あるものになっています。
【エピソード、記者会見まで】
コルトレーンたちミュージシャンの等身大のポスターが目の前に林立していた。ホスト役の男が通路から出入口まで赤いカーペットを敷きつめた。外の車の方へ歩く途中で、数人の若い女性らが彼らに花束を贈った。
彼女たちはお辞儀をした。ミュージシャンたちも最高のマナーでお辞儀を返した。
翌日、記者会見が東京プリンス・ホテルのマグノリア・ルームで開かれた。日本のマスコミの大手どころが顔をそろえ、外国のリポーターも姿を見せていた。その雰囲気はまるで平和条約の調印式のようでもあった。これは日本だけの出来事であって、アメリカではとうてい考えられないことである。
コルトレーンは晴れがましい場所でしゃべるのは嫌いだったが、礼儀は守りたかったし、どんなことを聞かれるのだろうかという好奇心もちょっぴり働いていたので、記者会見を承諾したのだ。
スイング・ジャーナル誌の編集長、児山紀芳が質問した。「十年後のあなたはどんな人間でありたいと思いますか?」
間髪おかず、コルトレーンは答えた。「聖者になりたい」
(資料01より。記者会見の内容は、別途このコーナーで取り上げる)
【ついでにフォト】
2012年 ペナン、マレーシア
(2021年9月23日掲載)