19660722-01

Peace on Earth (John Coltrane)
                     (24分48秒)



【この曲、この演奏】

 レコード化されている7月11日のサンケイホールで演奏されたこの曲ですが、この東京厚生年金会館でも冒頭に演奏されました。(ウィキペディアによれば”新宿”ではなく”東京”が正しいとのことです)

 演奏時間は11日のサンケイホールと、ほぼ同じものです。演奏構成ですが、11日に6分強あったアリスのピアノ・ソロがなくなり、その分がコルトレーンのテーマとアドリブに加わっています。

 演奏内容ですが、雄大な心持ちをより強くしたものであり、それはコルトレーンの演奏をより重みのあるものにしています。一方でファラオのソロは、これも雄大になったとの表現もありましょうけど、彼の魅力である荒々しさが影を潜めたともいえます。また後半から終盤でのコルトレーンのソロにファラオが絡んでこないことも、11日のとの違いと言えるのでしょう。

 どちらの演奏が好きかとなれば、それは好みの問題ですし、聴くときにも違うことでしょう。ただここではっきりと言えるのは、10日間の旅と演奏でコルトレーンの心境に何かがあり、それが演奏に反映されたということでしょう。



【エピソード、羽田に到着】

 ジョン・コルトレーン五重奏団の一行を乗せた日本航空の飛行機が、東京国際空港に着陸したのは七月八日夜だった。数千人もの日本人が、まるで世界的政治家を歓迎するのかのごとく、飛行機をとりまき、やがて彼らは公式歓迎委員団として、名誉ある賓客に向かっているような態度で、コルトレーンの名を合唱し始めた。飛行機のタラップをおりながら、ジミー・ギャリソンはコルトレーンの方に振り向いて言った。「これは、きっと相当の大物がこの飛行機に乗っているに違いない。どう思う?」

 コルトレーンは肩をすくめて「判らない」と言いかけたが、その時彼の目に大きな旗が映った。それにはこう書かれてあった。

WELCOME JOHN COLTRANE QUINTET   Impulse/King Records


(資料01よりそのまま引用。数千人との箇所は明らかに過剰な表現だと思うが、コルトレーン本のバイブル的な存在である1975年刊行の資料01によって、世界のコルトレーン・ファンに来日の様子がこう伝えられていた)



【ついでにフォト】

tp12009-003

2012年 ペナン、マレーシア


(2021年9月22日掲載)