19660711-02

Peace on Earth (John Coltrane)
                     (26分14秒)



【この曲、この演奏】

 コルトレーン作のこの曲は、1966年に入ってから演奏され始めました。2月2日にはレコーディングされていますが、それが世に出たのは1972年のことであり、アリスによって大きく手を加えられてのものでした。またこの日本公演以降には、この曲の演奏記録は確認されていません。(資料07)

 コルトレーンの来日公演でありますが、その規模から考えて、少なくとも半年以上前には決まっていたことでしょう。興行ビザの取得、各会場を抑える等々の手配が必要であることから、そして人気者のコルトレーンだけに、一年前に仮決定はしていたのかとも思います。

 コルトレーンは被爆地の広島と長崎での公演を希望し、日本公演のためにこの「ピース・オン・アース」という曲を作った、との話が一部で目にします。私も頷ける話ですが、何かの根拠がある話ではないようです。

 さて演奏ですが、雄大な響きで悲しみの癒しを求めるかのものです。コルトレーンの奥深しいテナー・サックスが、テーマを3分弱奏でます。続くファラオは7分半ほどのソロをとり、彼なりの荒々しさでこのテーマを表現し、特に2分過ぎからのギャリソンのベースが全面に出てからはファラオの表現力が増していきます。そしてアリスの6分半ほどのソロですが、もう少し短くお願いとの気持ちはありますが、全体の雰囲気にあったものを披露しています。

 最後には再びコルトレーンが登場し、9分半ほどの悠々しさと力強さの演奏となります。特にファラオも加わる後半は、ここでの白眉と言えるでしょう。



【エピソード、来日公演について】

 コルトレーン御一行は、7月8日から24日までの滞在中、飛行機に乗り日本へ入国、そして出国の日、さらに記者会見の一日、これを除いた14日間の全ての夜にホールで演奏した。しかもその14日間の中の10日間は次の公演地に向けて、新幹線や飛行機、また恐らくは車での移動があったのだ。まさに来日プロレスラー並みの強行軍である。

 さてこの14回のホールでの演奏の録音だが、”1回だけの放送用”との名目で、7月11日をTBSラジオ、7月22日をニッポン放送によって録音された。

 当然ながらレコード発売の予定は無く、アリス・コルトレーンは日本での二日間の録音が残っている事実を知らなかった。それが1973年になって動きがあり、この年に7月22日の演奏が「コルトレーン・イン・ジャパン」との名でLP3枚組で発売された。さらに7月11日分は1977年になりLP3枚組で「セカンド・ナイト・イン・トーキョー」との名で発売されたのだ。(以上は資料17より)

 資料07によれば、14回のホール公演のなかで演奏曲名が判明しているのは三日間だけである。ラジオ局録音の二日間と、私家録音が確認されている17日の神戸国際会館での演奏曲目である。もっと情報が出てきて然るべきと私は思うが、裏を取れているのはこの三日間だけとなる。

 私としては演奏時間一時間ものの「クレッセント」と「マイ・フェイヴァリット・シングス」のどちらが、演奏曲目が分かっていない11日間で演奏されたのかを、是非とも知りたいところである。



【ついでにフォト】

tp05002-106

2005年 香港


(2021年9月20日掲載)