19660202-04

Peace on Earth (John Coltrane) (7分8秒)



【この曲、この演奏】

 コルトレーン作のこの曲ですが、1966年に入ってからライブで何度か演奏されました。有名なところでは、7月11日と22日の厚生年金会館でのライブでしょう。

 これがスタジオ録音となると、このセッションだけなのですが、綺麗な形では世に出ていません。

 コルトレーンの死後の1972年4月16日に、アリス・コルトレーンがこの曲にオーヴァーダブを行い、それをアルバム「インフィニティ」として1972年に発売したのでした。その内容ですが、オリジナル演奏のピアノの部分を、アリス・コルトレーン自ら演奏し直した。さらにはジミー・ギャリソンのベース部分を、チャーリー・ヘイデンが演奏し直しました。そしてそこにストリングスを被せて、オリジナルより1分以上長い演奏時間で発表したのでした。

 このアリスの行為に多くのコルトレーン・ファンは、改悪とか故意のねじ曲げ(資料09)と感じていました。しかしながら、ストリングス無しのテイクがアルバム「ジュピター・ヴァリエーション」に収録され1978年に発売となり、コルトレーン・ファンは喜んでいました。ただしピアノとベースは1972年の録り直しのものでした。演奏時間はオリジナルのままです。

 その演奏ですが、ベースの弓弾きとピアノで重厚な雰囲気の中で、コルトレーンのテナーがテーマを演奏していきます。それが雄大な大地に舞い降りたかのものです。2分過ぎからアリスのピアノとなりますが、ここでのアリスのソロは、コルトレーンの提示を受け継いでいこうとの心がけによるものと感じました。再びコルトレーンのテナーに戻り、ファラオのピッコロらしき演奏も微かに響き、大地の恵みと厳しさを表現して、演奏は終わっていきます。

 さてこのセッションでは次に「レオ」が演奏されますが、これもこの「ピース・オン・アース」と同様に、アリスの手が入って1972年に発売されました。そしてこちらはストリングス無しの演奏は、世に出ないままです。両曲のオリジナル演奏の発売を、コルトレーン・ファンは誰もが願っていることでしょう。



【エピソード、ババトゥンデ・オラトゥンジの発言】

 ジョン・コルトレーンは、常に他者から何かを学び取ろうとしていた。その謙虚さにほだされ、人は求められた答えを彼に必ず用意していた。例えば、彼は私にアフリカについて来た。私は、アフリカの文化や言語に関する本、アフリカ音楽のレコードを贈り、さらに私のアフリカ人の友人に紹介さえした。彼はこう言っていた。「私はルーツに戻らなければならない。そこで私が永年探し求めて来たものを見出すのだ」    
 ババトゥンデ・オラトゥンジ

(資料01より)


【ついでにフォト】

tp10005-014

2010年 ペナン、マレーシア、タイプーサム


(2021年9月16日掲載)