19651014-01

Kulu Sé Mama (Juno Lewis)  (18分57秒)



【この曲、この演奏】

 1967年1月に発売されたアルバム「クル・セ・ママ」に収録されたこの曲ですが、コルトレーンの演奏記録は本セッションだけです。作者は本セッションに参加しているユノ・ルイスです。

 資料09にはこの曲について、「ゲストのジュノ・ルイスが母親に捧げた讃歌で、ジュノ自身のアフロ・クリオール語によるヴォーカルがフィーチュアされる」とあります。ユノ・ルイスと発音するのではと思いますが、この曲には「Juno Sé Mama」との別タイトルもあります。

 ユノの歌というよりは語りがこの曲の主であり、打楽器を巧みに使ったリズム陣の繰り出す感謝と願いの雰囲気がそれを支え、ギャレットのバスクラを含めてのホーンの色付けが花を添えています。

 この流れで始まった後に、テナー・サックス二本の絡み合いがありますが、この時期の他の演奏で聴けるような刺激的なものではなく、御供物の様子です。そこに続くマッコイのピアノですが、彼は明らかにカルテットに奏者がプラスされた以降にはピアノ奏法に変化があり、それはここで明確になっています。真っ直ぐ美しさを届けるその演奏は、新たなマッコイと思うものです。

 このテナー二本の絡み合い、そしてピアノ・ソロが終わった後は、前述のこの曲の特徴で進んでいく演奏となっています。

 スピリチュアルな世界との言葉を使っても、従来のコルトレーンのとは違う世界となっています。これはユノ・ルイス世界観によるものであり、それをコルトレーンが巧みにプロデュースしたからでしょう。



【エピソード、本セッション】

 コルトレーンが西海岸を楽旅中に行った3回のスタジオ録音だが、このセッションで最後となる。

 参加メンバーをみますと、ドラム奏者のフランク・バトラーとの共演は、ライブではこれまでに何度かあるが、スタジオ・セッションでは初めての共演となる。この意味では Juno Lewis との共演も同様だ。

 収録されたのは2曲であり、それぞれの曲名をアルバム名にした作品に収録されて発売された。その意味ではジャズ・ファンに聞き覚えがある曲を演奏したセッションと言える。

 なお「Kulu Se Mama」だが、資料07によれば別テイクが存在するようですが、その詳細は不明とのことだ。



【ついでにフォト】

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2009年 みなとみらい、ラ・マシンによるクモ


(2021年8月28日掲載)