19651002-01

A Love Supreme,
Part1 Acknowledgement
(John Coltrane)  
(21分53秒)



【この曲、この演奏】

 この「A Love Supreme」は、元々はコルトレーンが大人数での演奏を頭に入れて書いた作品なので、黄金カルテットに3人加えてのこの組曲の演奏は、コルトレーンの当初構想に合ったものなのでしょう。しかしながらここでの演奏には迷いが多く見受けられますが、そこはライブならではの貴重なものだと私は思います。

 2021年発売のCD「A Love Supreme, Live In Seattle」のブックレットには、どのように演奏されたかについて時間軸に沿って解説してありますので、そこから引用しながら書いていきます。

 まず最初に書きますが、コルトレーンとファラオのサックスは録音レベルが小さなもので、これは全編に渡っています。

 さて演奏ですが、三つに区分できます。最初が音出し確認、次が主でコルトレーンとファラオの演奏、そして次の曲への以降、この三つです。

 2分8秒でベースがメイン・リフを引き始め、マッコイが加わり、ここが演奏開始と言えるのでしょう。

 5分6秒でコルトレーンが吹き始め、ここから11分間の間、ソロはファラオに移ってから再びコルトレーンに戻る展開となります。ドラムの音レベルが大きい中で、マッコイの頑張りもあり、熱演かとも感じます。しかし遠くに聴こえるコルトレーンとファラオの演奏を聴いていると、吹きまくりながらも手探りしている様子が伺えます。

 13分47秒からコルトレーンは何度もキーを転がしていき、興味深い展開があります。

 メイン・リフを吹いているコルトレーンが16分6秒で吹き終えると、サックス二人がいない中で、次の曲への移行段階となります。これが5分以上続き、いくつかの動きがありますが、ベース二人が主の場面はなかなかのものでした。

 ライブならではのリラックス感から、ライブならではの緊張感に移っていく演奏であり、その意味では楽しめる内容です。



【エピソード、9月中旬からこの日までのコルトレーン】

 コルトレーンは9月14日から26日までサン・フランシスコにあるジャズ・ワークショップに出演した。そこにはファラオ・サンダースとドナルド・ギャレットの参加もあった。またこの間の9月22日には、黄金カルテットでの最後のスタジオ録音も行った。

 ジャズ・ワークショップ出演後にはシアトルに移動し、9月27日から10月2日までペントハウスに出演した。その中の9月30日のライブはラジオ局による収録が行われ、その模様は1971年にはLP2枚組で発売された。このラジオ局の収録は、地元の録音技師である Jan Kurtis の手で行われた。そして翌日の10月1日には、シアトル近郊にある Jan Kurtis のスタジオ録音で収録が行われた。その演奏は1967年にアルバム「オム」として発売された。またこのスタジオ収録は行われた10月1日の夜も、ペントハウスでのライブはいつものように行われた。

 ここまでが今まで分かっていたシアトルでの活動だが、ペントハウス出演最終日の10月2日にもライブ収録が行われ、そこでは組曲「至上の愛」が全て演奏されていたのだ。その演奏から56年経った2021年10月22日に、その内容がCD発売された。

 なお上記にある Jan Kurtis (この10月2日には関わっていないが)に関する僅かな情報が、2021年発売の「A Love Supreme, Live In Seattle」のブックレットにある。

 彼のフルネームは Jan "Kurtis" Skugsted(ヤン”カーティス”スクーグスタッド)であり、カントリー&ウェスタンのドラマー兼録音技師とのことだ。



【ついでにフォト】

tp06003-119

2006年 香港 維多利亞港 遊艇航行


(2021年10月29日掲載)